4月29日に行われた全日本柔道選手権男子無差別級で優勝した 王子谷(おうじたに)剛志(たけし)さん 東海大学4年 21歳
悔しさをバネに飛躍
○…全日本優勝の実感は大会翌日、体の疲れと共にやってきた。決勝の相手はロンドン五輪代表の上川大樹選手。「前に対戦したときは、30秒くらいで投げられた」。不用意に攻めた結果の敗戦に奮起した。「我慢して、我慢して、スタミナを削ってから、最後に決めにいった」と得意の大外刈りで日本一を掴んだ。無差別級の学生チャンピオンは2008年の石井慧選手以来の快挙。日本柔道界のホープとして一躍脚光を浴びた。186センチ137キロという体格は既に貫禄十分だ。
○…柔道を始めたのは6歳のとき。大の柔道好きの父の影響だった。「テレビアニメが見たかったのに試合の録画を何度も見させられた」と当時を思い出し笑う。「自分のことのように喜んでいた」と、今回の優勝で最高の親孝行ができた。
○…昨年12月から、監督に指名され主将として名門柔道部をひっぱる。「今までは自分のことばかり。周りを見るように意識したら自然と気持ちに余裕もでてきた」。自身の性格を「マイペース」と話すが、主将としての責任の重さと日々向き合う。メンタル面の成長にスポーツ選手の自伝を生かすなど読書家の一面も持つ。ゼミの准教授でもある上水(あげみず)研一朗監督に勧められたのがきっかけだ。全日本決勝の大一番の前も後輩に前日読んだ本を薦めた。「それでリラックスして試合に臨むことができた」
○…6月には現在6連覇中の全日本学生柔道大会(団体戦)、9月には日本代表として出場するアジア大会が控えている。「団体戦で勝つ喜びは個人戦のものとは少し違う。みんなで勝利を掴む瞬間は格別です」と7連覇という偉業に向けて意欲を見せる。「夢はオリンピックで金メダルをとること」。同じく現役学生で全日本を制した山下泰裕師範からは「堂々と戦ってくれ」と言葉をかけられた。期待と責任を大きな背で受け止め、大舞台に向けて今日も柔道着に袖を通す。
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