平塚市美術館「サラリーマンコレクターの知られざる名品わの会展」のプロジェクトリーダー 平園 賢一さん 岡崎在住 53歳
埋もれた名作に光を当てる
○…趣味で美術品の蒐集(しゅうしゅう)研究に勤しむサラリーマンや公務員などの在野コレクター団体「わの会」。同会理事として、懇意にしていた平塚市美術館との橋渡し役となり、同会悲願の公立美術館での展示会開催に漕ぎ着けた。普段は岡崎の内科婦人科「平園クリニック」の開業医として患者に向き合う。解説文を添えた美術品が並ぶ待合室は、来院者の間でも評判だ。東海大学医学部を卒業し、近くで開業の場を探したが「美術館があったから平塚を選んだんですよ」と笑う。
○…父の影響で絵画に親しんだ幼少期を過ごし、30歳の頃に古美術店で出会った作者不詳の一枚が美術品蒐集の原点になった。修道僧姿の老人が髑髏(どくろ)を手に瞑想する油絵は、店主曰く「お客を呼ぶお化けの絵」。繊細かつ力強いタッチに衝撃を受け、非売品と断る店主を「髑髏の絵だから医者が持つべき」と口説き続け3年。父の所有作品数点と引き換えに譲り受けた。
○…元の持ち主すら見付からない中、手がかりを求め資料を漁り方々に手をつくし、遂に雑誌の企画で寄せられた情報で、大正期の作家清水敦次郎の作と判明した。現在市美術館に寄託したが、美術評論家や学芸員から寄せられた「作者は分からないが、良い絵だから手放すな」の一言が忘れられない。作品と出会った衝撃、夢中になっての調査、新たな人との繋がり、気付けばコレクター道にのめり込んでいた。
○…現在約200作品を所有。場所、時間、お金、家族の理解が無ければ続けられない趣味だ。「娘と息子に、お父さんはお母さんと結婚してよかったよね、って言われる」と頬を赤らめる。これまで贋作などの失敗は数知れず。「税理士に、価値が低いから遺産騒動は大丈夫なんて言われたよ」と苦笑い。それでも、力がありながら世に出なかった埋没作家や名作を見付け、光を当てることに使命をも感じている。「隠れた名作、ぜひ見て頂きたい」
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