田村地区の旧国道129号線沿いに店を構える老舗パン店「柏木製パン所」が、3月31日の営業を最後に68年の歴史に幕を下ろした。2代目店主の柏木満男さん(75)を中心に、家族で店を切り盛りしてきたが高齢を理由に閉店を決意した。
地域の学校給食に長年携わっていたこともあり、閉店を告知したその日から常連客や噂を聞きつけた地域住民が列を作り、売り出したパンは連日、午前中で完売。多くの人に惜しまれた。
柏木さんは「今までこんなことはなかった。本当にありがたいことです」と語っていた。=中面に続く
学校給食で地域の顔親子3代で通う常連も
柏木製パン所は、柏木さんの父が1948年(昭和23年)に創業。1955年(昭和30年)ごろに旧神田村から学校給食の委託を受けて、神田小学校にパンを納入すると大野小、相模小、城島小と販路を広げ、最盛期には5人の職人で1日3000個のパンを配送した。
柏木さんは、父の作業を横目で見ながら17歳で調理場に立ち、高度経済成長の過渡期にあった1967年(昭和42年)に2代目として家業を継いだ。「作れば売れる時代だった」と言い、午前6時30分の開店前から周囲の工場に勤める社員がパンを求めて賑わった。
常時50種類のパンが並ぶ中で、甘さを控えたあんドーナツと、コッペパンにハムを挟んだハムパンが人気商品。変わらない味に惹かれて親子3代で通う常連客もいたほどで、大人から子どもまで愛されていた。
閉店の反響は想像以上に大きく、学校給食で世話になった横内中や神田中に通う生徒から長年の功績を称えられて感謝の言葉を綴った寄せ書きや花束が贈られた。柏木さんは「安心で安全なパンを提供することだけを心がけてやってきたので今はホッとしている。いただいた花束を持って父の墓前に手向けて報告したい」と話していた。
![]() 2代目店主の柏木さんとパン作りを支えたオーブン
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