戦後日本を支えた技術
西八幡に事業所を持つ株式会社パイロットコーポレーションが10月、創業100周年を迎えた。世界にも流通する同社の万年筆はすべて平塚で製造されており、100年の節目を祝う記念万年筆『七福神』(7本セット・500万円)など数種類の万年筆が発売された。
同社は1918年、日本橋で前身の「並木製作所」を創業。第二次世界大戦の空襲で大塚工場が被災したため、48年に旧海軍火薬廠跡地の一部払い下げを受け、平塚に生産拠点を移した。戦後、万年筆の装飾に使う金粉が手に入りにくい状況でも国から優先してもらい、製造を続けたという。伝統的な大和絵を施した蒔絵万年筆は、日本の厳しい時代を支える貴重な輸出品だったのだ。
同社の蒔絵職人グループ「國光会」には「万年筆という日本の光を世界に発信しよう」という意味が込められている。品質保証も兼ねてすべての蒔絵万年筆にその名が刻まれ、現在20人ほどが所属している。
100周年記念の万年筆は95周年を迎えたときから企画がスタート。國光会メンバーが知恵をしぼり、これまで受け継いできた最高峰の蒔絵技術を詰め込んだ。
製造は3年前から始め、ボディに漆を塗るなどの下準備に3カ月、絵柄を描いては乾かす絵付けに3カ月を費やすなど手作業で行われた。同事業所の蒔絵師の千田正樹さん(47)と関美佐さん(47)は、世界25セット限定で販売された『七福神』の制作に参加。7人の職人がそれぞれ七福神を担当しており、千田さんは寿老人、関さんは布袋尊の万年筆を図案から制作まで行った。
千田さんは肉合研出高蒔絵という手法を使い、奥行きある作品に仕上げた。「めでたい記念のものなので、華やかに金粉を使った。いつも最後は自分の手のひらで磨いて送り出す。どんな人の所に行くんだろうと、わが子のように思っています」と思い入れある万年筆に目を細める。
関さんは七福神の中で唯一実在していたとされる布袋尊を、表情豊かに表現。「中国の僧侶がモデルと聞いたので、日本の桜のように、中国で愛されている赤い梅の花を描きました」と笑顔で話していた。
製造部の小池智夫さん(54)は、「今後も万年筆は平塚で作り続ける。地域貢献していきたい」と話していた。
100周年記念万年筆は、平塚事業所の施設内にある蒔絵作品資料館「蒔絵工房NAMIKI」でも見ることができる。入館無料で事前予約制。問い合わせは同館【電話】0463・35・7069へ。
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