自動車の免許返納で運転できなかったり、近所のバス路線の減少や、バス停まで歩くのが困難だったりして移動手段に困っている人を住民の手で支えようという取り組みが、市内でも広がっている。しかし、住民主体の移動サービスは道路運送法上の明確な位置付けがなく、運用の仕方によっては違法性のある「白タク行為」と見なされるリスクがあるほか、保険などの経済負担、手続きの煩雑さなど、市民だけでは解決が困難な課題がある。
市内では須賀新田シニアクラブ(藤嶋武憲会長・79)、旭南地区協議体(須藤正代表・72)、土屋の大庶子分自治会外出支援事業部(瀬川健治さん・76)が外出支援に取り組んでいる。それぞれ、買い物支援や通院などをメーンに活動しているが、3地区共通の課題が、運営者の高齢化とそれに伴う担い手不足だ。
自家用車(白ナンバー)を使い、第1種免許で運転可能な移動支援は、道路運送法上、運送に対する対価をもらうことができない。地元の社会福祉法人から貸与された車両で運営している旭南、大庶子分は無料、須賀新田はガソリン代のみ利用者負担で運営しており、活動費には充てられず、運転者の保険料や、保険の等級が下がった際の差額などは、市の一部補助があるものの全額ではない。
また、実施主体が自治会やボランティア団体、有志クラブかなどによって、使える補助金が異なり、活動費の捻出など運営の仕組みを整えるための膨大な事務作業も運営を圧迫している。金銭的な負担や、事故発生時の対応が定まらない状況では、新しい担い手を増やすことも困難だ。
福祉村を受け皿に
高齢化により、今後移動支援を検討する地域は増えていくと予想される。市内18地区に設置され、市民のボランティア活動拠点となっている「町内福祉村」では「生活支援活動」として買い物代行を行っているが、移動手段がないだけで自力で買い物できる利用者のニーズとマッチしない側面もある。3団体の代表者は、移動支援を福祉村の取り組みとして認めてもらえれば「市内各地で住民主体の支援を始められるほか、補助金などの制度利用も容易になる」と話す。
町内福祉村を管轄する市福祉総務課は、福祉村の活動としての移動支援について「福祉村には車がなく、保険などの課題もある。福祉村の活動に、住民主体の地域内移送をどう結び付けられるのか市として検討を始めたい」とした。
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