2021年5月の災害対策基本法改正により、市町村の努力義務となっている「個別避難計画」。災害時に一人で避難することが困難な「避難行動要支援者」を誰が支援し、どこに避難するのかなどを調整するもので、国は地域の自治会や消防団、民生委員、福祉の専門職等の関係者と協力して作成することを呼び掛けている。
二宮町内在住で、神経難病のある60代男性のAさん宅では、今年7月に地区長や民生委員、ケアマネジャー、訪問看護師、平塚保健福祉事務所職員、二宮町職員を交えた訓練が実施された。
Aさんは5年ほど前から身体が動きにくいなどの症状が出始め、車いす生活の後に寝たきりに。現在呼吸器をつけており、災害による停電などが発生した際に、呼吸器を動かすための電源確保が必要になる。
自宅は土砂災害などのハザードマップ外で、二宮町も要支援者として把握していなかったが、難病者の情報を持つ平塚保健福祉事務所と連携することで、Aさんの避難計画が具体的に進んだ。町担当者は「個別避難計画は個人情報などの観点から、Aさんのご家族や地域の皆さんの理解がなければ進められない。今回、あらゆる立場からAさんに関わる人が協力してくれた」と振り返る。
顔が浮かぶ関係に
Aさん宅では、ポータブル電源や太陽光パネルを購入し、停電時に備えていたが、内部・外部バッテリーを合わせても13時間しか稼働を続けられないのが不安要素のひとつだった。そこで地元自治会ではガスボンベで動く発電機を購入。訓練では地域の発電機から電力を供給できるかなども初めて確認した。
訓練に参加した地区長の長田信夫さんは「発電機は地域の備蓄としても必要なもの。訓練に参加したことで、より具体に災害時の動きが想像できる。台風発生の報道を見たときなど、『Aさんの家は平気かな』と顔が浮かぶようになった」と意義を感じている。同地区民生委員の天野透さんは「訓練をするまで、Aさんに支援が必要だと知らなかった。情報がとにかく少ない。もっと町との連携を増やしたい」と話していた。
いつ災害が起こるかわからない中、Aさん宅では、家族の不在時や、ヘルパー、訪問看護などを利用中に被災した際にも、呼吸器や蓄電池の操作ができるよう、Aさんの妻による注意置きや操作のメモが至る所に残されている。
Aさんの妻は、「備蓄をしても、訓練をするまでどんな動きをしたらいいかわからなかった。今は何をしたらいいのか、自分の他にも知ってくれている人がいて、安心感がある。高齢者の方が多い地域なので、お互い様で、私自身も協力していきたい」と話していた。
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