新たな技術に国も注目
県農業技術センター(平塚市上吉沢1617)がこのほど、果樹の栽培技術で特許を取得した(特許第4895249)。「樹木の樹体ジョイント仕立て法」と名付けられたこの手法は、果実の早期生産量回復や作業の省力化・効率化が図れる技術として、注目されているという。
この技術は梨の新しい育成方法として、1995年より同センターで研究が進められていた。背景には梨の産地で樹木の高齢化が進み、収穫量や育成が低下しているという問題があった。
「梨は樹齢30年を超えると収穫量が落ち始めます。10アールに3トンが収穫の一つの目安になるのですが、収量を維持するには植え替えが必要になります。しかし、元に戻るまで10年ほどかかるんです」と説明するのは、同センターの関達哉さん。
梨の木を上手く育てるには熟練の技術が必要となるが、生産者も高齢化し植え替えが進んでいないのが実情。新規参入もしづらく、省力・効率化と収穫量の早期回復は大きな課題だった。
そこで考案されたのが、樹体ジョイント仕立て法だ。従来の半分の年数で収穫量を回復し、初心者でも40%の作業時間短縮が図れるのだという。
これまでの手法では1本の木に4本の主枝を作り、剪定を行いながら円を描くように枝葉を広げていく。ここに熟練の技術が必要となるため、作業の省力化や効率化が困難とされていた。
新しい方法では、地面と水平に主枝が伸びるよう育て、隣の木に接木し連結する。直線状の集合樹として仕立てるため、枝葉は左右にのみ伸ばせばよく剪定作業が楽になるので、熟練者でなくても均一に育てられる。
直線的に伸びる枝のおかげで空間を効率的に使え、元の収量に戻るまでの期間は大幅に短縮。作業の直線化が図れるので剪定と収穫も効率的に行える他、果実が均一な大きさに育てられるなどメリットは多いそうだ。
2005年より同センター内の畑で行われていた栽培は、07年から農家でも試験的に実施。その成果が認められ、特許取得へと繋がった。現在では県内はもとより埼玉県など県外の梨の産地でも導入されている。農水省の「農業新技術2010」にも選定されている他、一定の条件を満たせば補助金も交付され、国も注目する技術となっている。
また、同手法は梅にも応用され、こちらも梨と合わせ特許を取得している。「今は他県と共同して、他の品種への応用も研究しています」と関さん。平塚から発信された農業技術は、高齢化に悩む農家を救う光明としても期待が寄せられている。
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