冬は天体観測に適した季節。平塚市博物館の流星分科会では学芸員と市民らが、自作のカメラで多方面から流星を観測し、軌道を調査している。同館の藤井大地学芸員は「多くの軌道を集めて統計化し、ゆくゆくは太陽系の歴史解明に迫りたい」と語る。
アマチュアの地道な研究太陽系の歴史解明の手助け
冬は夜の時間が長く、晴れの日が多い。空気が乾燥しているため塵も少なく、透明度が高い。また、ひときわ輝く1等星は1年間で16個みられ、冬はそのうち8個を占める。「冬の大三角形」で知られるシリウス・ベテルギウス・プロキオンなどがそれにあたる。
流星は、宇宙空間にある直径1㎜から数cm程度の粒が、地球の大気と激しく衝突した時に光を放つ現象だ。一般的に「流れ星」の名で知られ、粒が地球に落下すると隕石となる。
流星を観測し、軌道を測定する流星分科会は2014年1月に、天体観測会のメンバーがしぶんぎ座流星群の写真を持ち寄ったことから発足した。かねてから富士市の実家や博物館屋上で流星観測をしていた同館学芸員の藤井大地さん(31)が「同じ流星を様々な場所から観測すると奥行きが分かり、軌道が分かる。会員が自宅で観測したデータを持ち寄って照らし合わせれば、従来よりも正確な軌道が分かるはず」と、10数人の同会を立ち上げた。
同会は主に、日常的に降り注ぐ流星を観測している。様々な場所から測定するために、部品を取り寄せ高感度ビデオカメラを自作し、毎夜撮影を試みている。小田原市在住で会員の清水紘司さん(74)は「ただ眺めるだけだった流星を違う地点での観測結果と照らし合わせると立体的に移動していることが分かるのがおもしろい」とその魅力を話す。
同会によると、この流星観測を積み重ねると太陽系の歴史が分かるという。流星の軌道は重力や光の圧力などの影響を受けて変化する。例えば毎年ほぼ同じ時期に訪れる流星群の軌道を正確に測定・集積すると、流星を取り巻く彗星がどのように移動したのかなどを分析するひとつの材料になる。
藤井さんは「流星などの天体観測は、アマチュアが地道に研究を積み重ねてきたことから始まった。そういった人々がサイエンスに貢献できることも魅力のひとつ」と語る。
次の流星群は三大流星群のひとつ、ふたご座流星群(12月12日〜15日)。極大日の13日は満月の光で見えにくくなるが、1時間で数十個の流星がみられ、明るく光るものも多い。夜空にきらめく輝きには宇宙の歴史が秘められている。
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