八重咲町在住の川合慶一さん(58)は30年ほど前から、宇宙の世界へ人々を案内しようと、オファーがあれば無償で天体観察の場を提供している。「共働きなどで、子供を連れていってあげたくても博物館などのイベント参加が難しい人の受け皿になりたい」という思いがあるからだ。
川合さんは管工事会社に勤める会社員。天文学を専門的に学んだことはなく、独学で星を観察するうちに知識を蓄えた。本格的な望遠鏡と子供にもわかりやすい説明で観察できると評判となり、湘南ひらつかビーチパークや自治会、地元商店のイベントに呼ばれるようになった。北は岩手、南は奈良と、依頼があれば息子とともに車で駆けつける。
川合さんが星空観察の相棒である対空双眼鏡を初めて購入したのは26歳のとき。1986年のハレーすい星を見ようと、湘南平や平塚海岸に赴いたが肉眼では全く見ることが出来ず、買い求めた。「当時23万円くらい。ちょっと背伸びをして買いました」と川合さん。観光地や船にも設置される望遠鏡で丸洗いができ、子供が扱っても壊れにくく、砂浜での観察もへっちゃらなタフさが自慢だ。
「星にはいろんな見方があるということを、宇宙物理学者の佐治晴夫先生に教わりました」と話す。20年ほど前、皆既日食を見に行ったベネズエラで出会い、帰国後も学生に星を見せるのを手伝ったり、講演会に足を運んだりした。金子みすゞの詩『星とたんぽぽ』を愛読し、「科学と芸術は切り離すものではない」という教えに感銘をうけた。「文学や歴史、音楽など好きな入口から空を見上げてみてください。望遠鏡がなくたって星は見られます」と笑顔で話す。
川合さんは8月、博物館の星を見る会(3日、10日、17日)のほか、25日に西八幡の菓子店「マ・コピーヌ」で開催される惑星観察会に参加する。「今年の夏は火星の大接近が話題ですが、他の惑星を見るのにもいい環境です。子供も大人も、お気に入りの空を見つけてくれたらうれしいです」と川合さん。今年の夏も、夜空から目が離せない。
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