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災害現場の「究極の選択」 トリアージの現実 命守る備えを

社会

公開:2019年2月28日

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救急救命士や医師による医療トリアージ訓練のようす
救急救命士や医師による医療トリアージ訓練のようす

 災害時に限られた人材や資機材で、最大多数を救助するために優先順位をつける「トリアージ」。平塚で大規模災害が起きた時、救助活動ではどのような状況に迫られるのか。市消防本部消防救急課に話を聞いた。

 トリアージと聞いて多くの人が思い浮かべるのが災害医療の現場だろう。呼びかけへの反応、自発的な呼吸、脈の有無などで重症度を救急救命士や医師が判断するものだ。救助者に黒、赤、緑、黄色のタグをつけ、処置の優先順位を決めていく。15日に平塚競輪場で行われたテロ災害訓練の中でもトリアージが組み込まれた。

 何百件と救助要請がある大規模災害などでは、医療の現場だけでなく、通報があった時点でトリアージをスタートせざるを得ない。「電話をすればすぐ駆けつけてくれる」という状況ではないかもしれない。

 「地震は起きない地域」という認識の中で発生したのが1995年1月17日の阪神淡路大震災だ。平塚市の消防隊が被災地に到着したのは19日朝。まだトリアージの考え方はなく、割り当てられた地区をしらみ潰しに回る「ローラー作戦」にあたった。手書きの地図と、本部に寄せられた通報のメモを頼りに1件ずつ声かけし、反応が無ければ次へ。現場を照らすライトすら足りず、情報も十分でない中で手探りの救助だった。

 当時派遣された職員は「つぶれた家屋の1階に、おばあちゃんがいるはずだから助けてほしいと手を引っ張られたことも。家族が埋まっているから戻ってきてほしいと呼ぶ声が飛び交った」と話す。

 阪神淡路大震災を教訓に取り入れられたトリアージは、手持ちの資機材や、救助にかかる時間、リスクの高さなど、順位付けの原則は定められているが、現場での判断は消防隊員にゆだねられる。救助を求める声はどれも切実で、心理的ストレスも多く、「究極の選択」ともいわれている。

 厚労省の統計によると阪神淡路大震災での死者のうち、家屋の倒壊による窒息・圧死が約8割、焼死・熱傷が約1割を占めた。負傷理由で最も多かったのが家具やガラスの倒壊、破損によるものだった。家具の固定や通電火災を防ぐための感震ブレーカーの設置が進んだのも、阪神淡路大震災を経てのことだ。

 同職員は「消防隊は現場に駆け付ければベストを尽くします。でも、そのためには優先順位をつけなくてはならない」と苦しい胸の内を語る。市民が「自分の命は自分で守る」という自助の意識を持ち、備えることが災害に強いまちづくりに必要だ。

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