免許返納で車を運転できなかったり、身体の衰えで自転車に乗れないなど、移動手段に困っている人を住民の手で救おうという試みが、須賀新田地区で進められている。市は「共助で高齢者問題に取り組む先進事例」として注目する。
9月6日、朝9時30分。集合場所には軽自動車が待機し、程なく女性住民2人が「今週もお願いします」と車に乗り込んだ。
一行が向かった先は1・1Km離れた茅ヶ崎市内のスーパー。週1回の移送支援を利用している91歳女性は「今日のような暑さのなか出歩くのは厳しい。移送支援はありがたい」と話していた。
移送支援を行っているのは65歳以上の地元住民で組織される有志団体「須賀新田シニアクラブ」(藤嶋武憲会長)。「助け合いの精神で地域の課題に向き合おう」と、自家用車による移送支援を昨年末から続けている。
利用者は現在5人。スーパーや病院など行き先に応じて2〜500円を支払い、その運賃がガソリン代に充てられている。
平塚市の飛び地である須賀新田地区には現在270世帯・600人ほどが暮らす。相模川を隔てた地域に暮らす人にとって、勾配があり交通量も多い馬入橋を越えて平塚市街へ出向くのは心理的にも容易ではない。加えて、同地区から最寄りのバス停まで1Kmほど離れているため、日常生活で交通手段に苦労する地元住民は少なくない。
同会では、選挙時も地域住民を投票所である松原小学校まで無料送迎している。今後は「利用者のニーズに応じて送迎先を増やせれば」と藤嶋会長。「送迎サービスを充実させると送迎する人の負担も増える。課題もあるが、知恵を絞ってやっていきたい」と前を向く。
交通弱者の救済や交通空白地帯の解消を目指したコミュニティバスが全国の自治体で普及するなか、平塚市では大神・田村地区と市民病院を往復する1路線にとどまる。
こうしたなか、市は須賀新田地区の取り組みを市全体に広げていきたい考え。自治会を通じて地域に検討を呼びかけながら、移送支援に必要な保険料の助成、移送支援の検討に向けた経費補助など支援策を充実させていく方針だ。
市福祉総務課によると、一部地域で住民主体による移送支援の検討が進められているという。担当者は「コミュニティバスの拡充は財政的に難しい。須賀新田地区のような取り組みを後押しできれば」と話している。
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