いちま〜い、にま〜い…。どこからともなくお皿の枚数を数える女性の声が聞こえてくる。怪談話で知られる『番町皿屋敷』の一節だ。一度はこの言い回しを聞いたことがあるだろう。
話の概要はこうだ。火付盗賊改・青山播磨守主膳の屋敷に奉公していた下女の菊が、主膳が大切にしていた皿を割ってしまった。菊は監禁されるも抜け出し、井戸に身を投じ亡くなる。それから毎夜、井戸から皿を数える声が聞こえるという仕立てになっている。
実は平塚市内に、この「菊」のモデルとされる女性の墓が存在する。
名前を「お菊」といい、伝承では平塚宿の役人・眞壁源右衛門の娘として生まれた後、奉公の身として江戸の旗本・青山主膳のもとに仕えていた。一説によると、主膳の家来がお菊に恋心を抱いたが、思い通りにいかなかった。その仕返しにと主膳が大切にしていた皿を隠し、お菊の仕業にみせかけたという。お菊は手打ちにされた後、長持に詰められ、平塚に送り返されたとされる。
当時、死刑人には墓を作らない風習があった。お菊も例外ではなく、埋葬した場所にセンダンの木を植え、墓標の代わりにしたという。
お菊の亡骸はかつて眞壁家の墓地があった紅谷町に埋葬されていた。1952年の区画整理事業に伴い、立野町内の墓地に移設。亡骸は伝承の通り、センダンの木の根元から見つかったとされる。もともと埋葬されていた場所は現在「お菊塚」として石碑が置かれている。
江戸が舞台の『番町皿屋敷』のほか、類話として、関西が舞台の『播州皿屋敷』があるなど、事の真相は定かではない。ただ、地元に残る伝承の一つとして、これを機に目を向けてみてはいかがだろうか。
(取材・平塚市観光協会)
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