タウンレポート 人魚像『海の讃歌』に光を 日本代表する彫刻家作品
平塚市制90周年の節目となる今年、ひらしん平塚文化芸術ホールのオープンを控えるなど、市内で文化振興の機運が高まっている。そんな中、約60年前に市制30周年を記念して建立された平塚駅南口広場の人魚像がにわかに注目されている。現在、作者の経歴や受賞歴のわかる案内板等はなく「著名な人魚像の作者が市民に知られていないのが残念だ。もっと注目されてほしい」という市民からの声が編集室に届いた。
人魚像は1963年3月、「青年のあこがれのシンボルが躍進途上の平塚市にふさわしい」として、当初は平塚駅北口ロータリーに建てられた。彫刻は文化勲章受章者で熱海市名誉市民の澤田政廣(せいこう)氏が制作し、当時の戸川貞雄市長が『海の讃歌』と命名した。
当時、人魚像は平塚駅利用者がロータリーに降り立った時に顔が見えるよう南を向いており、線路を隔てた海の方向を見つめていたという。しかし70年5月、駅広場中央地下道開通に伴い現在の南口駅前に移転。駅利用者の方向を向かせると、自ずと海に背を向けるかたちになった。
熱海と平塚つないだ市民
澤田政廣氏は当時すでに彫刻家として日展などに出展し、芸術選奨文部大臣賞や日本芸術院賞を受賞するなど活躍。熱海に生まれ、世田谷区に居を構えた澤田氏と平塚市はどうつながったのか。
地域の歴史を記録する冊子『浜岳』を発行している浜岳郷土史会副会長の栗原健成さんによると、澤田氏と平塚市をつないだのは、戸川市長の支援者で、平塚市観光協会に所属していた杉山久吉さんと考えられるという。杉山さんは馬入の生まれで、身体が弱かったこともあり、幼少期は熱海で療養して過ごした。澤田氏は当時の幼馴染だったそうだ。
文化勲章も受賞
1963年3月25日号の「庁内週報」によると同年3月29日午前11時に除幕式を実施。「人魚は等身大のブロンズ鋳物、台はミカゲ石張り付けで製作費(すえ付け工事費とも)200万円。その他造園、照明工事に23万円を投じた」という。
人魚像は「熱海市立澤田政廣記念美術館」にも常設。大型の人魚作品は複数あり、澤田氏が生涯を通して題材としたモチーフのひとつだ。79年、澤田氏は文化勲章を受章。88年に死去すると従三位を叙勲、勲一等瑞宝章を追賜された。
市の発展を願い30年の節目に花を添えた日本を代表する彫刻家の作品。市制90周年の今年、再び光が当たることを願う。
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