企画/自民党神奈川県第15区選挙区支部 意見広告 明日のために 衆議院議員 河野 太郎
日本は、ここ最近、一年間に八〇万人ずつ人口が減少し、地方の過疎化と高齢化も進んでいます。そのなかでも誰一人取り残されないように、行政サービスをしっかりと提供していかなければなりません。
スマホからマイナポータル経由で、出生届の提出や乳幼児健診、予防接種、引越しなどさまざまな行政の手続きができるようになってきたのもその一環です。スマホで手続きをやるのは面倒だという方には役所に来ていただく必要がありますが、茅ヶ崎市が導入したような、書類を書かなくても行政手続きができる仕組みが広がっていきます。
さらにこれから、自動車も自動運転できるようになり、日用品や常用している薬などがドローンで届くようになります。
また、例えば希望する高齢者世帯では、冷蔵庫や給湯ポットをインターネットにつないで、在宅しているのに十二時間こうした家電が使われていないと、家族や民生委員に連絡がいくような地域での見守りが可能になります。オンライン教育も進み、日本中どこからでも最先端の技術を学んだり、不登校の子どもが自宅から授業に参加できるようになります。山の斜面にセンサーを埋めて、土砂崩れの兆候をキャッチして警報を出すこともできるようになります。
デジタル化することが目的なのではなく、デジタル化することで社会をより便利に、そしてより安全にすることができます。
日本経済の底力
私は、日本経済にはまだまだ底力があると思います。日本には、優秀な人材と莫大な金融資産があります。しかし、それを成長の種となる新たなアイデアや投資に繋げられていません。
低賃金労働に頼った労働集約的な職場が温存されていることが一人あたりの生産性が上がらない原因と言われています。正規雇用三五〇〇万人に対して、パート・アルバイトとして働く人が一五〇〇万人、その業務の多くが最低賃金に近いものになっています。
非正規雇用で働く人たちが、今よりも生産性の高い仕事に移るために、収入の心配をせずに、より給与の高い仕事のためのスキルを身につけられるようなセーフティネットを創設する必要があります。
我が国の企業の内部留保は、二〇一四年の三五〇兆円弱から、この一〇年間で五〇〇兆円以上に積み上がりました。しかし、現在の日本の国内市場に成長を見いだせず、日本企業も生産拡大のための投資を躊躇しています。
そのために、政府が集中的に社会課題を解決するための規制改革を行なって、成長の見込める分野を作り出すことが必要です。例えば、地域の足である路線バスの本数を維持しようとする規制改革を進めれば、自動運転技術の実用化を前倒しするための投資を創り出すことができます。
データセンターやAIのために今後、日本の電力需要が急増すると推測されていますが、例えば洋上風力発電に関する政府目標を高く掲げ、その実現のために企業の投資を呼び込むような予見可能性を引き上げれば、この分野への投資につながります。
これまで日本企業は、変化に適応する「しなやかさ」と変化を創り出す「したたかさ」で経済発展を成し遂げてきました。その強みを阻む壁をぶち破るために必要な改革を、腰を据えて進めることができれば、日本は必ず、再び力強く世界で躍動できると、私は信じています。今の日本のGDPが、人口三分の二のドイツとほぼ同じであるならば、壁を取り払えば、日本は今の一・五倍に成長できるはずです。
働き方改革
社会保険料や税控除に関する「年収の壁」を超えると社会保険料などの負担が増して手取りが減るため、「壁」を超えないように労働時間を抑制せざるを得ない人たちがたくさんいます。このことが労働供給を抑制し、人手不足に拍車をかけています。
「男性も女性も働く、男性も女性も育児や家事をする」というライフスタイルを前提とした制度への転換も必要です。男女の賃金格差はいまだに解消されておらず、非正規雇用に女性が多いことも特徴的です。既成概念や固定的な慣行を改め、男性も女性も働きやすい制度や環境を整え、同一労働同一賃金そして同一待遇を徹底していく必要があります。正規、非正規にかかわらず年金や健康保険、あるいは産休や育休の取得といった待遇を働き方にかかわらず同一とし、同じ給与なら同じ税と社会保険料を負担するように時間をかけて制度改正をしていきます。
稼げる農業へ
食料自給率を高めるためには、米をはじめ日本の農作物を増産しなければなりません。補助金を出して減産する農業政策から、農作物を増産し、平時には輸出して稼げる農業への転換を推し進めます。輸入の小麦粉を国産の米粉に置き換えて輸入を減らしていくような努力も必要です。農業用機械の自動化やドローン、人工衛星の活用の効果を最大化するために一枚あたりの水田の規模の拡大等の工夫も必要です。
世界的に和食がブームとなるなかで、和食を切り札に、野菜や果物の輸出も、日本が誇る冷凍・冷蔵技術を活用して拡大していきます。また和食に限らず、さまざまな日本の飲食業の海外での店舗展開も後押ししていきます。
教育現場を変える
経済格差が世代を超えて受け継がれることがないように、親の所得に関係なく通える公立学校の教育水準を上げなければなりません。
公立学校の教育の質を高めるためには、現職教員が学び直す機会を増やし、新しい教育理論や教材にふれる環境を整える必要があります。
しかし、現場の教員は子どもたちと向き合う時間すら十分に持てていません。教員が教えることに集中できるように、デジタル化による業務効率化をさらに進めるとともに、教えること以外を担当する職員によるさまざまなサポート体制が必要です。
学校現場における非正規教員の増加も深刻な問題です。同じ教室で同じように教えているのに、給与水準が大幅に異なるのは健全な状態ではありません。教員として経験を積み専門性を高めるうえで、不安定な雇用は足かせになります。教員の質を高めるためにも、非正規教員の正規雇用を進める必要があります。
エネルギー政策の見直し
日本の最終電力消費量は、二〇〇七年度に約一兆kWhに達しましたが、その後、人口減少や省エネの進展で電力需要は減少し続け、二〇五〇年度には約八千億kWhになると推計されていました。
この間、再生可能エネルギーは、毎年、電源の一%程度の拡大を続けてきましたが、もし、今後、我が国の再生可能エネルギーの導入スピードをこれまでの約二倍にできれば、二〇五〇年度には再生可能エネルギーの供給が約八千億kWhとなり、計算上、電力需要をほぼ再生可能エネルギーでまかなうことができるはずでした。
ところが最近のAIの急速な発展とデータセンターの拡大により、今後、電力需要が急増し、日本全体で二〇五〇年度に必要とされる発電電力量は、一兆四千億kWh程度まで拡大する可能性が指摘されています。この場合、再生可能エネルギーが八千億kWhまで拡大したとしても、それだけでは電力が不足します。最近の風水害を考えると、温暖化対策が最優先で、二〇五〇年までに化石燃料を利用した発電はゼロにしなければなりません。
必要な電力需要を満たすことができなければ、データセンターを国外に持っていかなければならなくなり、また、日本国内でのAI投資にもブレーキがかかり、経済活動が停滞してしまいます。そのため、私もエネルギー政策に関して、政策変更をせざるを得なくなりました。
今後、安全と判断された原発を再稼働することで二千億kWh程度の電力を追加供給することはできますが、それでも必要な需要を満たすことができないかもしれません。将来に向けて、さらなる省エネ技術の開発、再生可能エネルギーの導入の加速、水素やアンモニアや核融合の活用など、あらゆる技術を総動員して備えます。
明日を創るために
今のやり方、慣れているやり方を変えることは、誰にとっても大変です。でもその一歩を踏み出すことで、世の中がより豊かに、より便利になるならば、少しずつ、試してみませんか。そのために、私たちも一つひとつ丁寧に説明をしながら、前に進んでいきたいと思います。
(10月1日寄稿)
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