ギャラリーさざれ石で作陶展を開いている 和田 吉美さん 秦野市在住 69歳
器のある空間楽しんで
〇…白地に黒い葉を描いたカップが窓辺に並ぶ。シンプルな家の形をした香炉。組み木の立体パズルのような作品は花器だそう。「湯飲みでも皿でもないし、『この器どうやって使うの』と思う人もいるでしょう」。大磯町のギャラリーさざれ石で「器の色々 壁にも 卓上にも」と題する個展を6月26日まで開いている。「壁に掛けたり、草を1本挿してみたりして部屋の一隅に器のある空間を作る。そんな楽しみ方もいいかな」とほほ笑む。
〇…神戸に生まれ育つ。絵画が好きで、中学時代は美術部に所属。国宝や重要文化財を含む東洋の古美術品を所蔵する白鶴美術館に足繁く通った。ペルシャの古陶磁器などに興味を抱き、なかでも一番ひかれたのが、中国宋時代の磁州窯。白化粧とそこに施された黒色の文様が印象的な陶器に、10代前半の感性はときめいた。「温かみのある白色がとても素敵で美しい。その域に達したい」
〇…京都市立芸術大学卒業。学生運動が吹き荒れるなか、前衛陶芸家の八木一夫教授のもとで夜間も休日も創作に没頭した。「器に『オブジェ』という分野を確立した先生で、物を見る目や作陶する姿勢、人間性といったもの全てを教わりました」と振り返る。「作家だけの思いが一番ではない」という師の教えを胸に、「見た人が作品の向こう側で何かを想像できる物を作れたら」と学生時代からの「試行錯誤」は今も続く。
〇…結婚後、夫の仕事で秦野市へ。田園地帯にアトリエと窯を構える。散歩に出れば、木の芽吹きや植物の蔓の巻き方などに視線を注ぎ、創作のアイデアを得ようと常に感性を研ぎ澄ます。「集中力が養える」という篠笛が趣味。美濃国際陶磁器ビエンナーレ陶芸部門、八木一夫賞現代陶芸展、朝日現代クラフト展ほか多数入選。