大磯町で700年余りの歴史を持つ「高来神社夏季例大祭 御船祭」の今夏の開催が見送られた。7月18日・19日に予定され、町内13基の神輿が集う勇壮な渡御や浦安の舞の奉納に加えて、今年は華やかな船形の山車(まつりぶね)が巡行する2年に一度の年にあたっていたことから、中止を惜しむ声も多い。
照ヶ崎海岸にまつわる伝説に由来する同祭。その昔、蛸之丞(たこのじょう)という大磯浦の漁師が海中から光り輝くタコを見つけて船に引き上げると、タコは千手観音像に姿を変えた。蛸之丞は像を高麗寺(現在の高来神社)に奉納し、千手観音が引き上げられた場所は照ヶ崎と呼ばれるようになったという。
古くは漁師の祭として船で花水川を遡り、同神社の御霊を神輿に乗せて海上から照ヶ崎海岸まで向かう海上渡御を行っていた。後に同神社の神輿を先頭に各町の神輿が練り歩く陸上渡御に代わり、偶数年のみ水引や幟などで華やかに飾り立てた2艘の船形山車「明神丸」が登場するようになった。祭は1972年に町指定無形民俗文化財にも指定されている。
今年4月、新型コロナの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発令を受けて、同神社と氏子総代会で御船祭の開催について話し合いの場が持たれた。様子見も考えたが「事前の準備などもあり、中止せざるを得ない」と判断。町内の区長など関係者に向けて文書で報告した。神社で最小限の関係者のみで神事を執り行い、神輿や船形山車は出さない。来年に船形山車を出すかなどは未定。近年では台風の直撃が予想された年に、同様の対応をしたことがある。大磯町郷土資料館が所蔵する大正時代の大磯町助役日誌によれば、関東大震災の際も翌年の祭は開催されていた。船形山車の船上で、千手観音や高麗人渡来の説話を伝える木遣や御船唄を披露する木遣師の福田良昭さん(60)は「2月頃までは公民館で木遣の練習をしていたが公共施設の休館でそれもできなくなり、再開の日を待っていた。中止は残念だが仕方がない」と理解を示す。
同社の渡辺幸臣宮司は「残念に思われる方も多いと思うが、今回は世界規模で歴史の転換点になるような事態。将来が良い方向に転換するよう、振り返らずに前を見てほしい」と思いを語った。
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