二宮町にある徳富蘇峰記念館で、明治の文豪や俳人などの書簡を複写した資料「“書”に親しむシリーズ」を制作した。夏目漱石や高浜虚子、森鴎外などの肉筆に釈文と解説が添えられている。5人分を1セットにして「在宅時間が増えた今、100年前の著名人士が書いた字や文章をじっくり楽しんで」と、頒布を始めた。
明治・大正・昭和に活躍したジャーナリスト徳富蘇峰。同館は政財界の要人や軍人、文化人らが蘇峰に宛てた書簡約4万6千通を所蔵する。新型コロナウイルスの影響で3月から休館し、見学者を迎えられなくなった。
書やくずし字を勉強している人たちが資料探しに苦労している様子を知っていたという学芸員の塩崎信彦さんと宮崎松代さん。「手紙の記念館である当館の特徴を生かせないか」と、書簡のコピーを研究材料として提供することにした。
第一弾の「文学者編1」には、夏目漱石・中江兆民・高浜虚子・徳富蘆花・柳田国男の書簡が収録されている。「文学者編2」は森鴎外・坪内逍遥・幸田露伴・与謝野晶子・国木田独歩。
同館に残る漱石の唯一の書簡は、漱石山房のオリジナル原稿用紙に書かれたもの。「漢詩を交え、漱石独特の言い回しで感謝の意を伝えている」と塩崎さんは話す。蘇峰が創刊した総合雑誌『国民之友』で小説『舞姫』を発表した森鴎外の書簡は、前日早朝に送った自身の原稿が今日の新聞に掲載されていない理由を憤りも露わに問う内容。鴎外の気質が伝わってくる。
鴎外の書簡は同館に13通、蘇峰の弟で小説家の蘆花からは150通ある。「今回のシリーズでは人間性や蘇峰との関係がよく表れている、最も興味深い手紙をピックアップした」と宮崎さん。解説資料には、手紙が書かれた背景と、多数の資料から得た蘇峰によるその人物評も載せた。
書簡は実物大のA3版カラーコピー。封筒の表裏も付く。今後は伊藤博文や渋沢栄一、乃木希典、新島八重、岡倉天心などの書簡を取り上げ、政治家・実業家・軍人・女性・芸術家編を予定しているという。
1セット2000円(税込み)。同館で購入できるほか、電話やホームぺージでも注文を受ける。郵送料370円。
問い合わせは同館【電話】0463・71・0266。開館時間午前10時から午後4時まで。月曜休館。【URL】http://www.soho-tokutomi.or.jp/
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