大磯町で彫刻の個展を開催している 渋谷 武美さん 小田原市在住 80歳
心朗らかに創作活動
○…身近な人物や動物を題材にした彫刻小品を4月12日(月)までギャラリーさざれ石で展示している。過去の作品から新作まで約30点。「家族」「少女」「やんちゃ」「花束」などとタイトルを付けた木の彫刻から温もりや慈しみが伝わってくる。聖歌隊の歌声が聴こえてきそうな「輪唱」は、祈りや癒しを連想する作品だ。「かしこまったものはあまり好まない。楽しんで作ろうと続けてきた」と語る。
○…山形県出身。自動車会社への就職を機に上京した。知人を通じ、多摩美術大学教授で後に文化勲章を受章した彫刻家の圓鍔勝三氏と出会う。休日に家を訪ねてデッサンし、上野の美術館や百貨店へ美術鑑賞に通った。22歳のとき内弟子に。修業時代は安い木材を求めて仲間と木場へ行き、直径120cmもある桂の木をコロで運び、チェーンで釣り上げた。「今みたいにチェーンソーがないので、材料を調達するのに1日がかりだった」と振り返る。
○…1974年・78年、日展特選受賞。長男が生まれたときに母子像の第一作を制作した。「子どもの代わりに座布団を抱いてポーズを取ったこともあります」と妻の和美さん。小田原市の公共施設や平塚駅周辺などにブロンズの母子像が設置されている。還暦を前に夫婦でイタリアを旅行。教会や美術館をめぐりながら古い彫刻に触れ、改めて木彫の魅力にひかれたという。西相美術協会会員。
○…彫刻の道で60年近く。若い頃は先輩作家の助手や学校の宿直代行、造園のアルバイトなどもした。「様々な仕事を経験して勉強になった。ここまで来れたのは妻の協力が大きい。家族や周りの人に助けてもらったおかげ」と感謝する。気分転換は、種蒔きから苗を育てる家庭菜園と散歩。