吉田茂元首相が大磯の自邸で亡くなったのが、54年前の10月20日。緊急事態宣言の解除を受けて10月2日から再開した県立大磯城山公園の旧吉田茂邸と大磯町郷土資料館で、吉田茂に関わる企画展が同時開催されている。
郷土資料館では、常設展示室に吉田茂の実父・竹内綱から吉田宛の書簡1通を新たに展示した。吉田は3歳の時に、竹内の親友だった吉田健三の養子となっている。同館では竹内から吉田宛の書簡を5通所蔵しているが、この手紙は初公開。書簡は吉田が中国の安東で領事を務めていた時期に届いたもので、実業家の福沢桃介(福沢諭吉の娘婿)が安東で設立した瓦斯会社で起きている紛議について、竹内を通じて吉田に仲裁を依頼する内容。大陸経営に関わる竹内の実業家としての側面と、中国における日本人の経済活動を支援する吉田の領事としての活動が読み取れる。同館学芸員は「竹内と吉田の関係はまだわからない部分も多く、両者の関係性が垣間見える貴重な資料」と解説する。書簡の展示は年内で終了予定。
旧吉田茂邸の展示室ではミニパネル展示「別荘地大磯と吉田茂」を来年3月まで開催している。当初は昨年10月から今年3月にかけて予定していた展示だったが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための臨時休館で、会期の半分程度で中断を余儀なくされた。宣言解除に伴う同邸の公開再開を受けて、リバイバル展示を決めたという。
展示では「明治政界の奥座敷」と呼ばれた別荘地大磯の成り立ちや、大磯に別荘を構えた政財界の要人と吉田との関係について年表や地図、当時の写真などと一緒に紹介。戦時中に和平工作を行っていた吉田茂に対し、陸軍が手紙や書類の検閲の拠点としていた借家の場所や、スパイが連絡文を入れた缶詰を埋めて情報交換をしていた明治天皇臨海記念碑の場所などをまとめたマップなども展示している。
客足徐々に回復
宣言解除に合わせて県が打ち出した対処方針に基づき、10月末まで大型バスの入場予約を受け付けていない城山公園だが、近県からの小グループなどを中心に客足は徐々に戻りつつある。秋晴れの週末に埼玉県から訪れた60代の女性グループは「遠出はまだ心配なので、やや近い大磯に初めて来た。感染症対策をしながら色々と見て回りたい」と話していた。
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