湘南デンタルケアークリニックを運営する医療法人社団悠星の理事長を務める 重原 聡さん 二宮町在勤 63歳
北斎との縁 地元で紡ぐ
○…運営する「湘南デンタルケアークリニック」25周年記念事業として、海外では『グレートウェーブ』の名前で知られる葛飾北斎の『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』をモチーフに壁画を制作した。北斎の浮世絵を欧州に広め、パリ万博では通訳も務めた林忠正は母方の祖先にあたる。忠正は国内の美術品を海外で売り捌いたとして「国賊」と責められた時代もあっただけに、親からは「あまり明かさないほうがいい」と言われてきた。神山典士著の『知られざる北斎』を読んだことがきっかけで、忠正が文化の側面から日本の世界的な地位を確立した功績に目を向けるように。「関係する家系図を集め、富山の実家に足を運び、おじが残した忠正についての資料を紐解くうちに熱中していった。忠正の足跡をどんどん明かしていきたい」と意気込む。
○…二宮小、二宮中出身。医師家系の16代目に生まれた。1999年1月に同院を二宮町山西に開院。参考にしたのは顧客満足度の高さを分析した書籍『ディズニー7つの法則』だ。「矯正やインプラントなど、患者さんが求めるライフスタイルに合わせて歯医者も夢を叶える仕事。患者さんではなくファンを増やしたい」と笑う。
○…「ピンクオレンジ」と表現する同院の壁色は、父が小田原市で開業した歯科医院のものと同じ色。「父は雪深い富山から移り住んだので、陽射しの綺麗さや、山に点々と見えるみかんのオレンジがうれしかったようです」と目を細める。地元二宮を「アートの力で盛り上げたい」という思いは、日本の文化を欧州に広めた忠正の情熱に通じる。「二宮町は移住組が多く、パワーを感じる。打ち解け合って新たな産業が生まれるのでは」とグレートウェーブを予感する。