小田原市内に現在、およそ300基あると言われる道祖神。先週紹介した祭りに続き、今週は小田原で見ることのできる多種多様な道祖神を取材した。
「道祖神って未だによくわからない。だから調べていておもしろいのかもしれません」。そう話すのは、城内の市郷土文化館で民俗について調査する保坂匠さん(30)だ。3年前から同所で学芸員として働く保坂さんは、小田原が特徴的なエリアであることに言及。「市内に残る道祖神は、現状300ぐらい。数としては多く、伊豆海岸部や箱根の影響からさまざまな形を見ることができる」
村の境や十字路にあり、外から襲いくる疫神、悪霊を防いでくれると言い伝えられてきた道祖神。近年では、道路整備などの際に他の場所へ移転されるケースもあるが、「県内ではもともと村の中心にあるところも多い」(保坂さん)。1600年代中頃から始まった文化と言われ、主には関東・甲信越、鳥取県とその周辺に集中的に分布している。
全国的にも珍しい稲荷型
神奈川県内では男女の神様が並ぶ『双体道祖神』(写真【1】)が最も多く、小田原も同様。相模型とも呼称される。さらに市内では、早川から箱根町南東部にかけて見られる『石祠型道祖神』(写真【2】)、根府川に残存し伊豆型とも呼ばれる『僧形単座像道祖神』(写真【3】)、市街地を隔てて東西に分布し全国的にも珍しい『稲荷型道祖神』(写真【4】)などがある。小田原は関東の双体道祖神の分布エリアでは南端に位置し、近隣の伊豆や箱根の影響が形となって現われている。「相模、伊豆、駿河。小田原が文化の混交地帯だったことが、道祖神を見ると1番よくわかると思う」と保坂さんは話す。
古くから伝わる道祖神で、特異な性質が見てとれる小田原。道祖神にちなんだ祭りでも、先週掲載した前川地域の『人形山車』以外に、久野や鴨宮でお目見えする『山車』、片浦の『福踊り』、道祖神を祀る小屋を7カ所巡る東町の『ナナトコマイリ』など、市内各所で伝統が引き継がれている。
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