「螢田にホタルを飛ばそう」―。6月になるとホタルが繁殖のために光を灯しながら川辺を飛ぶ小田原アリーナ脇の蛍川。「螢田に蛍を育む会」(松谷良峰会長)では、都市化により全国的に失われつつあるゲンジボタルの生息環境を守り、ホタルの光を復活させようと今年初めて人工繁殖の挑戦を始めた。
「字螢田」残る蓮正寺
一般的に「螢田」の名称は、1952年開業の螢田駅の駅名が発端とされる。周辺にホタルが飛ぶ田園地帯が広がっていたことに由来するが、実はそれ以前に定められた蓮正寺370番地の字名としても螢田の名が残っていることがわかった。
「かつてこの地域はホタルがいる田園地帯として知られていた。ホタルと人が共存するまちを復活させたい」。地元に住む松谷会長は97年、45人の会員とともに会を発足。小田原アリーナの開業に伴いごみのポイ捨てが増え、生活排水による川の汚染が問題になっていた蛍川の清掃活動や雑草の手入れ、さらにホタルは暗闇を好むため、アリーナの電灯を遮るヤマザクラなどの植樹を行ってきた。
しかし、2001年の酒匂川堤防拡張工事の影響により、数は少ないながらも生息していたホタルが全滅。それ以降は清掃活動を続けながら、他地域から提供されたホタルを飛ばし、観賞会を企画してきた。
人工繁殖に挑戦
同会は自生するホタルを復活させようと、昨年繁殖3カ年計画を策定。1年目は川岸の全長7メートルの土壌を整備して幼虫の蛹床(さなぎどこ)を作ったほか、エサとなるカワニナの数を増やすことにも成功。2年目の今年は、成虫を会員の自宅で飼育。産卵、ふ化させたのち、幼虫を放流する予定だ。
松谷会長は「ホタルが飛ぶと心が安らぐ」と話す。暗闇を照らす柔らかい灯(ともしび)は、「まるで暗い気持ちに夢を与える希望の光のよう。20年の東京五輪の年にホタルがたくさん飛ぶようすをみんなに見せるのが夢」。
21年間に及ぶ活動で、蛍川はごみも減りきれいな水を取り戻した。カワニナの生息数も増え、少しずつホタルの姿も戻ってきている。「ホタルと共存するまちを広めていきたい」と挑戦は続いていく。
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