若者支援の専門家らが連携し、生徒が抱えるさまざまな課題を早期に見つけ、支援につなげる場所として注目されている「高校内カフェ」。小田原高校定時制で昨年から始まった「おだていカフェ」も、今月1周年を迎えた。
高校内カフェは2012年、中退や不登校のフォローアップ事業として大阪府西成高校で始まった。神奈川県では、14年に田奈高校(横浜)で図書館を開放したカフェがオープンしたことを皮切りに現在県内9校に誕生している。その一つで、県西地域で唯一あるのが小田原高校定時制の「おだていカフェ」だ。
同所は、長年青少年育成に取り組んできたNPO法人子どもと生活文化協会の働きかけで17年に開設。就労支援の為のキャリアカウンセラーも招き、月に2回、通常授業の始まる前の1時間、校内の食堂を活用して開催している。責任者の高野紀子さんは「貧困や家庭内の問題など複合的な課題を抱え、適切な支援を受けないまま中退や不登校、引きこもりへつながるケースがある。何気ない会話からこうした芽を見つけることが大切」とカフェの意義を話す。
眺めるだけ→参加談笑へと発展
開設当初は、遠巻きにみているか、ポツポツと飲食をして去っていくだけで「お互い探っている状況」だった。だが必ず「またね、待っているね」と授業に送りだすうちに、段々と生徒に変化が現れるようになったという。「最近どう?」「今日バイトで嫌なことがあってさぁ」進路のこと、恋愛のこと。日常会話を積み重ね、その中から「今、何を考え、何に悩んでいるのか」に心を寄せる。たとえ参加者がいなくても、変わらず開き続けることで、いつしか生徒にとって一つの”居場所”という存在になっていた。小さな気付きの中から具体的な就労支援に移行したケースもあり、「我々がなかなか気づけないこともある。お互い補完しあえているのでは」と廣幡清広定時制教頭。取材した日は20人程がリラックスした表情でカフェタイムを楽しんでいた。話を聞いた男子生徒は「無料だし、楽しいし」と言葉を残し、小腹を満たして教室へと向かった。
カフェのお菓子や飲み物は、お供え物を貧困家庭等に提供する全国組織・おてらおやつクラブ(本部/奈良)登録の寺から譲り受け、無償で振舞う。運営はボランティアに頼るところが大きいが「とにかく定着が一番」と高野さん。開設から1年、参加率は3割程で、本当に支援を必要としている生徒が来ているかは未知数だ。だからこそ「いつでも待っている」、そんな場所を目指している。
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