市域面積の約4割を森林が占め、国内でも有数の木製品の生産地である小田原。市では森林の整備を進め、木材の利用を図るためさまざまな施策を打っている。その一つが、「木育」。各校で開かれている「わたしの木づかい」パイロット事業だ。
「わぁ、いいにおい!」
削り出したヒノキの木屑が教室に溢れかえる。国府津小で昨年11月に実施された木工教室の一幕だ。間伐材を使ってオリジナル箸を制作する授業で、この日は木工製品を製造する薗部産業が講師を務め、道具の説明や木の特性の話を交えながら、技術指導にあたった。
用いられるのは、順番に木棒をセットし、削っていくと箸の形に仕上がる専用台とカンナ。削り終わった箸は、思い思いのイラストを描き込み、塗装を重ねて約1カ月後に生徒の手元に渡る。この日参加した児童は「まっすぐ削るのが難しかったけど楽しかった」「木ってリラックス効果があるみたい!届くのが待ち遠しい」と声を弾ませていた。このほか、学校で使用する机の天板にも間伐材を利用、児童自らの手で取り付け作業を行う学校もある。
利用期迎える人工林使う→守るを実感
2016年に始まった事業は、林業の基礎を学ぶ「座学」、森林・製材所・加工工場などを見て回る「校外学習」、そして木製品を生活の一部に取り入れる「木製品導入」の3本立てから成る。木がたどる一連の過程を通年で学ぶことで、間伐の重要性への理解を深め「人の手が入り、木を使うことで、森林を守る」というつながりを肌で感じてもらうことが狙いだ。
初年度は2校の参加だったが、年を重ねるごとに参加校も増加。18年度は6校475人の児童がそれぞれ「木づかい」について考える時間をもった。参加はあくまで学校側の任意だが「子どもの反応も好評で、先生方にも共感いただいている。徐々に定着してきてくれれば」と市農政課は話す。
同課によれば、市の森林のうちヒノキやスギといった人工林が約7割で、その多くが50年生以上となって木材資源としての利用期を迎えている。適切に木を伐り、利用し、地域の中で経済循環をしていくこと。学校教育の現場からも、市の自然・伝統・産業を守るための努力が続けられている。
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