”都大路”への出場権をかけた「神奈川県高校駅伝競走大会」が11月1日、山北町の丹沢湖周回コースで行われ、相洋高校が男子の部で初優勝を果たした。同校は12月20日(日)に京都で行われる全国高校駅伝に出場する。
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「3番、相洋!」
ゴール付近で運営者の声が響くと同時に、横縞ブルーのユニフォーム姿が最後の直線に飛び込んできた。アンカー石塚颯太の人差し指は、高らかに空へ―。2位と15秒差の2時間10分09秒。「全員が1秒を絞りだし」つないだ襷リレーだった。
1秒を絞りだせ
「秒差の争いになる」というのが全員の共通意識だった。どのチームも絶対的エースが不在と言われるなか「今年はチャンス」(濱口直人主将)。各自が絞りだした1秒が最終区に影響する。「そこだけしっかりやろう」と、小池進顧問は説き続けたという。
「後ろに任せて、自分の力だけ出し切ろう」と1区平島龍斗が4秒差の2位で襷を渡すと、2区濱口主将は1Km過ぎで「ここは攻め時」と、最短区間のスピード勝負で一気に前へ出た。2区までに首位に立つという、小池顧問の描いたプラン通りの展開となった。
「前半早く入りすぎて後半で落ちてしまった」という3区大野悠翔、「緊張して内容も良くなく、中盤走れなかった」4区田中大稀だが、それでもトップで襷をつなぎ続けた。ともに見せたのは終盤の粘りだ。
都大路へ行くぞ
今大会、相洋のレースには「(都大路に)行くぞ」の声があちこちで響いていた。3年生にとっては駅伝だけが唯一残された舞台。「このまま終わる俺らじゃない」と言い聞かせる先輩に、「まだ引退はさせない」と後輩たちも気持ちを寄せていた。5区を任されたルーキー木島陸は、残り1Kmで大野の「行くぞっ!」の声でギアを入れ、6区古山拓輝も「自分の走りをするだけ。リズムよく走れた」。下級生リレーの勝負所でも1秒を絞りだした。
「命を削る」
チームは夏を過ぎてもバラバラだったと小池顧問は明かす。コロナ禍でチームとしての意思疎通が難しく、個々の温度差もあって、決して一丸とは言えなかった。だからあえてキツイ一言をぶつけた。「命を削るくらいの覚悟でやらないと」
この時を境にチームに変化が訪れた。濱口主将を中心に全員が目標を統一し、同じペースで走れるようになった。ケガで戦線を離脱していた石塚がチームに戻ったのは、大会2週間ほど前。ようやく全てのピースが揃い”全員駅伝”へのスイッチが入った。
アンカー石塚は言う。「それぞれが最後ふり絞って、気持ちでつなげてくれた襷でした」。区間賞は誰一人いなかった。だが全員が区間4位以内にまとめ、総合力で頂に上り詰めた。「努力をいとわない集団にしていこうと話してきて、見事に体現してくれた」と、小池顧問は一人ひとりと抱き合った。笑顔に溢れる選手たちの腕には”命を削る”の四文字。「今年の相洋はこれしかない」(濱口主将)、全員ができるすべてを出し切った時、都大路への扉を開いた。
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