湯河原町在住の日本画家で、町立湯河原美術館名誉館長を務める平松礼二さん(79)がフランス共和国芸術文化勲章(シュバリエ)を受章した。「芸術・文化の領域での創造、もしくはフランスや世界での普及に傑出した功績のあった人物」に贈られるもので、近年は漫画家の鳥山明さんらが受章している。
鎌倉市内にある平松さんのアトリエに、フランスの文化大臣と駐日フランス大使の署名入りの書簡が届いた。「夢にも思っていなかった。なんだか分からなくってポカンとした」と笑顔で振り返る。
フランス大使館で3月24日、叙勲式が行われ、フィリップ・セトン駐日大使から勲章が授与された。大使館では今回の叙勲について、「平松礼二氏の詩情豊かな作品と、モネの作品との絶え間ない対話、そして芸術における日仏間の交流促進への貢献をたたえるもの」としている。
平松さんは1941年東京生まれ。これまでに山種美術館賞展大賞、MOA岡田茂吉賞大賞などを受賞。また『文藝春秋』の表紙絵を2000年から10年まで描いたことでも知られる。
フランスとのかかわりは50代半ば。ヨーロッパでは初となる個展のためにパリを訪れ、会場近くのオランジュリー美術館で印象派の巨匠クロード・モネの『睡蓮』に出会った。それまでイメージしていた西洋画とは大きく異なる、ジャポニズムの影響を受けた作品に「なぜ西洋の画家が浮世絵に憧れたのか」と心を揺さぶられた。それ以降、毎年フランスを訪れモネの足跡をたどりながら創作を続けてきた。
「かつて日本画の影響を受けた西洋画を、現代の日本画家の目を通して描いたらどうなるか」。睡蓮などをモチーフに独創的な作品を多く描いてきた。その取り組みは仏、欧州でも高く評価され、ジヴェルニー公立印象派美術館やドイツ国立アジア美術館などで展覧会が開かれている。
「フランスでは浮世絵や漫画などさまざまな日本文化が知られているが、近世の日本画がすっぽり抜けているのが悔しかった」という平松さん。「日本画の遊び心、装飾性、様式美など奥深さを知ってもらえたことが何よりうれしい」と笑みをこぼした。
湯河原美術館では、平松礼二館15周年記念展「睡蓮交響曲 日本画家による100年後の返歌・返画」を6月28日(月)まで開催中。平松さんの屏風作品、構想図、文藝春秋表紙絵原画などを展示している。大人600円・小中学生300円、水曜休館。(問)0465・63・7788
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