地元の漁業者とダイビング事業者らで構成する「小田原藻場(もば)再生活動組織」による江之浦漁港沖合の藻場再生事業が動き出した。藻場とは海藻が茂り貝類や魚が餌場や棲家とする場所で「海の森」とも呼ばれている。
地元の素潜り漁師で同組織の代表を務める野瀬晃治さんによると、2019年の台風19号以降、土砂が流入するなどして「一面びっしり生えていたカジメ(海藻)が年々なくなっていった。それに伴いアワビの漁獲量は10分の1に減少した」と危機感を抱いていた。市に相談をした野瀬さんら漁業者の声を発端に、地元のダイバーやコンクリート製造業者、県水産技術センターらの協力が得られ事業化に向けて動きだした。約1年間の準備期間を経て、県や国の補助事業として実施に至った。
秋頃の胞子放出に向けて
6月1日、定置網漁の漁船で引っ張るのは約500kgの「藻場礁」。沖合70〜80m、水深13〜14mの海底に4基沈めた。後日、沈めた保護網内にダイバーが早熟カジメと呼ばれる成長の早い海藻の種苗を吊り下げる。県水産技術センターが培養に成功した早熟カジメは通常のカジメの約3倍の早さで成長する。
これまでも江之浦付近ではカジメを増やす試みが行われてきた。今回初めて取り組んだのは藻場礁に保護網を取り付けたこと。胞子を放出して繁殖できるようになるまで、アイゴなどに食べられる食害を防ぐことができるという。また藻場礁には、海藻の成長を促進する効果が実証されているアミノ酸を含有した環境活性コンクリートを使用している。今秋から胞子を放出し始め、徐々に豊かな海を取り戻していく計画だ。今後5年をかけて経過観察や管理などを行う。
藻場が再生するとそれを餌とするアイゴやウニなどの食害生物も増えるため、駆除も合わせて進める必要がある。「すぐに結果が出るわけではないが、継続的に点検をして、1年でも早く豊かな海に戻ってくれたら」と野瀬さんは期待を込める。
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