小田原市は10月17日、市所有の「豊島邸」(栄町)の利活用について、(株)JSフードシステム(入生田)の提案を採用したと発表した。提案内容の「うなぎ料理店」の実現性の高さと、画廊開放による地域連携を高く評価した。
豊島邸は1941年の建築。瓦葺屋根付き門と黒板塀、書院風と数寄屋風の意匠を組み合わせた木造平屋建ての歴史的建造物で、和風庭園も備えている。箱根町宮ノ下の開業医、故・豊島牧四郎氏の別邸で、「一月庵」と呼ばれる。豊島氏の死去後、妻の廣江さん(故人)が2015年に小田原市に寄贈。20年には国登録有形文化財に登録された。
市は同邸の維持・保全と地域活性化を目的に、指名型プロポーザルで事業者を募り優先交渉権者を決定してきたが、20年に小田急電鉄(株)が、21年に(一社)全国古民家再生協会神奈川第二支部が、コロナ禍の影響などを理由に辞退した。
今回は賃料などの条件を参考程度とした上で、幅広い活用法を募集する民間提案制度を実施。審査の結果、提案があった12件の中からJSフードシステムの提案が採用された。同社は「地魚回転すし小田原港」、「自然薯の森 山薬」など、小田原市と箱根町を中心に飲食店10店を展開。清閑亭(南町)の利活用事業者にも決まっている。
提案名称は「豊島鰻寮 一月庵」で、う鍋などのうなぎ料理を提供する。また画廊を開放し、小田原を活動拠点にする芸術家の発表の場や、地域の集まりの場として活用する。市文化政策課の担当者は「新たな魅力と価値を創造し、清閑亭とともに回遊拠点の拡大と地域経済の好循環につなげてほしい」と期待を寄せている。同社の田川順也社長は「小田原の迎賓館的な場所を目指すとともに、廣江夫人の思いを受け継ぎ、芸術・文化の発信と発展拠点を築きたい」と話している。
市と同社は今後、詳細協議を開始し、賃貸借契約を行う。田川社長は「2月にはオープンできるように準備を進めている」と意欲を語った。
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