割れや節など加工できないお椀の材料を、新たな商品に生まれ変わらせる。薗部産業株式会社(小田原市)とワークショップコンシェルジュの福本ミカさん(アスペングローブ代表・厚木市)がアップサイクルに取り組んでいる。
薗部産業は木工製品・漆器の製造販売を行う企業。日本の銘木を使い、木そのものが持つ色味や木目を活かした「めいぼく椀」は、グッドデザイン賞「ロングライフデザイン賞」を受賞するなど高い評価を得ている。
一方、福本さんは愛知県の木工所で生まれ育ち、結婚を機に上京。2016年に起業し、モノづくりを通じて環境教育を伝えるワークショップの運営や純銀や木の商品企画を行っている。
福本さんは5年ほど前、木製品事業者の支援を行う県産業技術センター の紹介を通じて、めいぼく椀を知った。「見るからに上質な木。端材もあるはず、なにか活用できないか」と考えていた矢先、都内の展示会で薗部産業の薗部弘太郎さんと出会った。
めいぼく椀を製造する上で、年間で2tトラック数台分の端材が生まれ、炭や灰として活用していた。これまでも端材使用の申し出はあったが、かたい木材に全員断念した。「彼女の熱意に『やれるものなら、やってみな』と託したいと思った」と振り返る。福本さんは「生まれた時から木にふれてきた。できる」と即答した。
木の色味・大きさ生かし
その日から端材との格闘が始まった。小さくカットされているため、大きな機械を使えず、専用の治具を必要とする苦労もあった。ふと、木の種類ごとに違う色合いに着眼、「この色味を生かして、お椀の材料だったことがわかる小さなツリーはどうか」と閃いた。薗部さんの支援も受けながら試作を重ね、20年の年末に完成した。
「お椀になりたかったツリー」と銘打った商品に、薗部さんは「まさか完成できるとは」と喜んだ。23年には「神奈川なでしこブランド」にも認定され、商品の認知も広がりつつある。福本さんは「木を身近に感じ、地球環境を知るきっかけになれば」と話している。
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