戦時下の湯河原を舞台とする『みかん山の魔女』を出版した 中村 弘行さん 真鶴町在住 72歳
平和と食の大切さ知って
○…「戦時下、湯河原の温泉旅館のほとんどは横浜からの学童疎開寮と海軍病院になっていたことを初めて知った」。湯河原町立図書館にあった郷土資料に目が留まり、「傷病兵と児童の心温まる交流を物語に」と小説を書きはじめた。「戦争という闇」をわかることが重要と、主人公は平和な時代からタイムスリップした小学生の少女。疎開先の食事情を伝えることで、当時の食軽視、精神重視の問題を掘り下げた。「戦争は身近にあったもの。現代の子どもたちにも伝えていきたい」と願いを込める。
○…三重県出身。教育者を目指して上京、大学院を経て、小田原短期大学で39年間教員を務めた。専門は食物栄養学で栄養教諭の養成に携わってきた。「一方的に話すだけでは退屈」とはじめたのは、なぞかけ。「アレルギーとかけて、ちらし寿司ととく。その心は卵はきんし」。学生の心をつかみ、名物先生として活躍。バレー部の顧問としても情熱を燃やし、大学女子バレーで県3位に導いたことも。2020年に文部科学大臣表彰を受け、2年前に惜しまれつつ退職した。
○…日本の伝統食材「寒天」を研究する第一人者。教員時代に伊豆半島の寒天橋の見学に行き、その由来に興味を持ち、寒天の研究にのめり込んだ。全国の産地を調べ歩き、昨年には研究の集大成となる『ものと人間の文化史 寒天』を出版。新聞やラジオなどメディアでも注目され、「日本の誇る保存食。もっと知りたい」と興味は尽きない。
○…12年前に妻と真鶴町に移住。果樹と野菜を育て、ほぼ自給自足の暮らし。子どもと孫が遊びに来れば、得意の料理も振る舞う。「何もないと思っても、何かはある。どんなことでも面白がる」と笑顔で語った。
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