5月の選挙を経て4年ぶりに市長職に就いた加藤憲一小田原市長に、就任から1カ月の現状や、今後の市政運営への考えなどを聞いた(聞き手/タウンニュース社 野口康英、6月17日取材)。
--まず、現在の心境はいかがですか。
「違和感なく戻ってきた感じです。ただ、この4年間とても心配していた市政や職員の状況について、その立て直しに取り組めるところに戻ってきた満足感もあります」
--着任早々に、各部局のヒアリングとご自身の考えのレクチャーをされました。
「最初にやったのは、いわゆる懸案事業への考え方とどういう方針でその立て直しをするかの確認。またマニフェストに掲げた200本近い事業についてどういう内容で進めるのか。短期間でしたが、重点的に一通りチェックすべき項目について庁内ですり合わせをした段階です。報道などを通じて市民の皆さんが関心を持っているテーマがいくつかあります。個別の案件では、例えば清閑亭は、事業者選定や、提案を受け途中で変更したプロセスなど、外部の視点でジャッジできる人にしっかり見てもらう必要があると思います。少年院跡地のデジタルタウン構想や健康増進拠点施設は、一旦見直す方針で指示を出しました。市議会6月定例会で議員さんからご質問があると思いますが、基本的な方針はここで明確に出していくことになると思います」
--6月定例会初日の所信表明で、実現を目指す小田原の3つの姿として「自然環境の恵みがあふれるまち」、「未来を拓く人が育ち生きるまち」、「多彩な資源が健やかに花開くまち」を示しました。まず自然環境への考えについてお聞かせください。
「小田原が持つ豊富で多彩な自然環境は最大の資産です。意外に小田原の人はそこをあまり評価していないですね。そうしているうちに田んぼがつぶされ農地は荒れて、自然環境が守られている状況ではない。これからの時代を支える価値をお伝えして、実際に守り活用する方向に踏み出していきたいですね」
--マニフェストに、鬼柳・桑原地区の工業団地化を取り止め、メダカ保護区として水田を保全するとしています。
「象徴的なプロジェクトとして、注目されると思い意識的にやりました。短期的には、地域の経済に全然つながらないんじゃないかとか、農家はもう田んぼをやめたいと思ってるのにそれをまたやらせるのかなどいろんな議論が出ると思います。けれど長い目で見ると、神奈川県であそこにしかいないメダカが生息できる水田環境を残していくということは、小田原市として、自然環境や小さな命を大事に、環境と人の暮らしが調和したまちをつくっていく、そちらを選択するという意思表示に他ならない。これから環境の時代になっていき、食料もさらに危機的な状況になると思います。そうした時に、このような意思表示をした小田原を選択する企業や、そういう小田原であれば住みたいと思う人も間違いなく出てくると思います。あそこを残しておいて良かったと思える時代が来ると思うんですよ。いろんな議論が起きてくることを私も望んでいます。6月定例会でもさまざまな議論が交わされると思いますので、正面から受け止めてしっかりと考え方を提示していきたいたいですね」
--農業支援について、市としての具体的な施策やアイデアは。
「農業者の高齢化、離農は本当に深刻な状況です。小田原市のように、まとまった農地もなく収益性の高い農産物も持ってない地域で専業農家を育てることは難しい。そこでは多くの方が農に関わる市民農であったり半農半Xであったりという、仕組みを作ることしかないと思っています。また貴重な専業農家の方、後継者の方は農をやりながら生きていくための経済基盤を持たなくてはなりません。例えばEUですでに行われている、いわゆる直接補償ですね。環境的な価値に着眼して、例えば田んぼの生物多様性とか、農薬とか化学肥料の使用頻度を低くした場合に、それを評価して直接補償を増すような仕組みが向こうにはあります。そのような直接補償制度も持ちながら、農家の方がより良い環境下で続けることを応援するような施策も検討したい。また、多様な方が少しずつの面積でいいから農地を支える"市民皆農"といったらいいでしょうか、そういう方向に向かっていけると良いと思います。農地は食料を生産するだけの空間ではなく、そこで子どもが育ったり多様な世代が交わって地域の絆が育っていったりと、多義的な価値を持っている。それをみんなで享受できるような場所として、農地に手を入れていきたいと思っています」 (続く)
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