連載【8】 検証・小田原の課題 小田原地下街
小田原市の三大懸案事業のひとつ「小田原地下街」。2度の倒産を経た今、注目される地下街の「これまで」と「これから」を取材した。
市民の不安解消へ説明に次ぐ説明を
▼地下街の構想が持ち上がったのは今から半世紀も前の1956(昭和31)年のこと。駅前広場の計画決定を受け、計画事業に全面的に協力してきた箱根登山鉄道が建設申請した。69年に同社と小田原市、商工会議所、商店街連合会の4者が小委員会を立ち上げ、72年に小田原地下街株式会社を設立、構想から20年経った76年に66店舗が軒を連ねる「小田原駅前地下街」がオープンした。
▼ピーク時の91(平成3)年にテナント売上は87億円あったが01年には33億円まで落ち込み、02年に17億円の負債を抱え、倒産してしまう。翌年、市と会議所、さがみ信用金庫の出資で新会社「株式会社アミーおだちか」が運営を引き継ぐが、テナントの撤退、売上の減少に歯止めはかからず、07年に営業を終了、解散となる。小田原市は「アミーおだちか」終了後、地下街利用の明確な方針を示すことができないまま08年に新市長を迎える。
▼地下道のみの利用に毎年3000万円の維持管理費を投入せざるを得ない状況だった地下街。08年に就任した加藤憲一市長は、商業施設としての再開を示し、地下街の土地の半分を所有するJR東日本と協議を進める。現在は13年度末までの開業を目指し、ようやく再生計画案を示すところまでこぎつけた。計画案には地産地消を全面に打ち出したレストランや地場の素材や特産品を使った農産物・水産物の販売、伝統工芸品の企画展示など「小田原」を発信するための施設整備などが盛り込まれている。また市民の交流の場としてイベント広場を設けるほか、まち歩き案内として「タウンカウンター」を新たに設置するなど観光客の街なかへの回遊性促進を図る狙いもある。施設は小田原市が事業主体として所有、維持管理も小田原市が行い、当面の運営は専門業者に委託する方針だ。開業後10年程度の設備更新の工事費を含み総事業費は25億1300万円を見込む。市民意見を反映させながら実施計画を作成、6月の議会で策定される予定。
▼地下街の再生議論は「3度目の倒産はありえない」という大前提がある。それが、再生計画案が出るまでに5年もの歳月を要した理由といえなくもない。しかし、再開後の収支計画ひとつとっても、市民の疑心暗鬼な心情を解消するにはまだまだ時間を要するだろう。
▼明日は市長選。次のリーダーが誰であれ、地下街の再開は市の現有財産の活用として大いに議論されるべきだ。ただ3度目の「倒産回避」のために税金が投入され続けたりはしないのか、市民の不安は小さくない。不安解消のためには、丁寧な説明が不可欠だ。
|
|
|
|
|
|