2月26日、一寸五分の和釘で床張りを終え、小田原城天守閣の摩利支天像空間再現事業における大工の仕事が終わった。最後の1本の和釘を打ち、約3カ月間の仕事を終えた千賀基央(もとなか)さん(31)は、「なんとか終われたんだな、とほっとしています」少し目元を緩ませ、安堵の表情を浮かべた。
三の丸小から城山中、小田原高校へ進学した千賀さんにとって、城は常に身近にあった。関西の大学で建築を学び、静岡の建設会社に就職。今回、この仕事に携わったことで「改めてお城がある地元っていいな」と、城下町の良さに気づいた。
芹澤毅棟梁(45)を筆頭に、渡邉大蔵さん(47)、高久和也さん(35)と、さまざまな経験を持つ大工たちと過ごした3カ月。特に天守閣に入った2月からは、材の提供者や林業関係者など、毎日のように見学者が訪れた。多くの人に「いい木だね」と声をかけられるたび、この仕事に関われたことに誇りを覚えたという。
天守閣最上階へと続く階段から右に目を転じると飛び込んでくる木に満ちた光景が、千賀さんのお気に入り。3月の声とともに大工から左官へとたすきが渡り、千賀さんの手がけた木ずりは土壁に塗りこめられた。それでも確かな足跡は残した。
「人のしごとを見るのも僕の仕事。その場にいるだけでも大きな財産になりました」―。真剣に考え、答えるまっすぐな眼差しに、小田原の職人の未来を見た。
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