昭和30年代はじめまで小田原駅―板橋駅間を走っていた路面電車「市内電車」の里帰りが、実現に向け大きく前進した。現在車両を所有する長崎電気軌道(株)(長崎市)からの譲渡に向け、大きな懸案となっていた車両の設置場所が決定した。
車両の保存活動を展開しているのは「小田原ゆかりの路面電車保存会」(小室刀時朗会長)だ。チンチン電車の愛称で親しまれた箱根登山鉄道(株)運行の「市内電車」は、1965年の廃線後に長崎電気軌道へと車両が譲渡された。同社から今年、現役を引退した車両の譲渡先募集が発表され、複数の応募の中から同保存会が譲渡先第1候補に選ばれている。
「小田原に市内電車を里帰りさせたい」-熱い思いを持ちつつも、市内での設置場所が決まらず活動は足踏み。「市内電車の記憶を後世へ伝える」「市内活性化や観光客誘致」等の活用案を踏まえ、多くの人の目に触れる、車長11mが収まるといった条件をもとに、小田原市や企業、団体等に協力を打診していたが、時間的猶予や新型コロナの影響もあり難航していた。
そこにこのほど朗報が届いた。市内南町で来年2月開業予定の交流拠点施設から、設置の協力が得られたのだ。同施設は、報徳二宮神社(草山明久宮司)が運営するまちづくり会社・報徳仕法(株)が事業主体。観光回遊や3世代交流等を目的に、倉庫を改装して地場産品のショップ、レストランなどを運営する計画だ。同保存会から要請を受けた草山宮司は、「観光振興、地域コミュニティの形成という目的は共通している。車両の引き取り期限も迫っていると聞いたので、協力させていただくことにしました」と話す。
保存会・平井丈夫副会長は「場所は国道1号線にも面し、かつて市内電車が走っていた場所でもある。ご協力に感謝しています」と話している。
資金の応援募る
里帰り実現へ、もう一つクリアしなければならないのが約1000万円という事業費用の工面。長崎から小田原への車両移送費でも700万円強が見込まれている。
同保存会ではクラウドファンディング(CF)と銀行振込で広く応援を募っている。CFはサイト「READYFOR」(https://readyfor.jp/projects/odawarachinchindensha)の「小田原ゆかりの路面電車。64年越しの里帰りプロジェクト」から。期間は9月25日(金)まで。銀行振込は、口座「さがみ信用金庫本店・普通2112309・オダワラユカリノロメンデンシャホゾンカイ」。平井副会長は「地元の方、全国の鉄道愛好家の皆さまにぜひ応援していただきたい」と呼び掛けている。問い合わせは平井副会長【電話】090・3687・8355へ。
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