小田原の耕作放棄地に繁茂し過ぎた竹林を伐採し、竹材として地域に役立てよう―。市内の有志が現在、資源再利用に向けたプロジェクトを進めている。その背景には、地域の農家が直面する深刻な鳥獣被害があった。
「たった一晩で約500kgもやられた時もあった」。そう話すのは、代々300年以上にわたりミカンなどの栽培を続ける、市内沼代の農家「あきさわ園」の秋澤史隆さん。地域に広がる耕作放棄地の竹林を寝ぐらにするイノシシなどが農作物を食い荒らし、畑が掘り起こされ大穴を開けられるなどの獣害が、同園では2014年頃から深刻化しているという。
国が毎年実施する、耕作放棄による国内の荒廃農地の発生状況調査によると、小田原市内には19年度、東京ドームおよそ36個分にあたる168ヘクタールの荒廃農地が広がっている。市農政課によると、市内の農業者などから昨年度届け出があった鳥獣被害総額は2532万1千円。これは一昨年度(1058万5千円)の約2・4倍に上る数値で、同課担当者は「届け出ていない農家もあると考えられ、実際の被害額はさらに大きいのでは」と推測している。
獣害拡大の要因について、県立生命の星・地球博物館で動物生態学を研究する学芸員は「山林が開発され、山の上の方で住みにくくなれば野生動物は人里に下りて来る。耕作放棄地に住み、農園に来て栄養価の高い農作物を摂取することでイノシシなどは出産率が高まり、爆発的にではないが頭数が増加しているのでは」と分析。さらに、市内にはイノシシやシカを食べる大型の捕食動物がほぼいないことも、獣害拡大に拍車を掛けていると考えられるという。
こうした課題に向け近年、官民ともに対策を模索。市では17年度に、狩猟免許保持者を対象にしたイノシシやシカの捕獲報奨金制度を導入した。民間では耕作放棄地の竹林を伐採して竹垣として再利用するプロジェクトが進んでいる。有効な打開策となるか。試行錯誤が続く。(次回に続く)
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