高校横綱を決する「立川立飛・元日相撲」(令和2年度全国高校相撲選手権大会)が1月1日、立川市で行われた。高3になって最初で最後の大会に、旭丘高校のモンゴル人留学生ムンクジャルガルさんとオチルサイハンさんが出場。実力を発揮し切れなかったが、確かな足跡を残した。
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都道府県から選抜された112人がエントリーした同大会。「緊張してしまった」というムンクさんは、岸田光弘監督からの「集中していけ」の言葉を反芻するも、動きにキレがなく寄り倒され、2回戦で姿を消した。160kgの巨漢とパワーを生かした押し相撲が出せず「気持ちの弱さです」と肩を落とした。
一方のオチルさんは、3回戦で強豪・鳥取城北の選手と相対。過去の稽古で勝利した相手だったが「足が止まってしまった」と立ち合いで勢いをそがれると、巧みにいなされ、前のめりに手を着いてしまう。得意とする四つからの投げを繰り出すことなく敗れ、「自分の相撲を取れなかった」と絞り出した。
土俵に立てずとも絆を見せた主将
「悔しい」と声をそろえる2人のそばで、唇をかむジャージ姿があった。奥知久さん(3年)、2人にとって唯一の同期であり、チームをまとめた主将だ。
コロナ禍の中で同大会の開催が決定したのは11月。神奈川では予選をせず、過去の戦績で出場者が選抜された。奥さんは力を試すことすら許されず、一度も土俵に上がることなく高校ラストイヤーを終えていたのだ。「日々の積み重ねが甘かったということ。でも2人は先に進んでいて…戦うことすらできないのはやるせない」。主将なのに、背中を追うだけの自分に、焦りと情けなさを感じていたという。
それでも、3年間苦楽を共にした3人だけの同期。「あいつらが勝つ姿を見届け、一緒に喜びたい」と帰省を取りやめ、サポート役を志願し、アップ中も緊張をほぐそうと声を掛け続けた。言葉が通じなかった当時から懸命に寄り添い続けた奥さんを2人は心から信頼し、「一緒にいてくれて力になった」。揃いのまわし姿で土俵に立つことは叶わなかったが、敗北の悔しさも最後まで共有した。
3年間の思い出を問うと、「みんなで掴んだ初めての全国団体のメダル」とムンクさんが挙げれば、オチルさんは「いつもの稽古」と静かに答える。「誰一人欠けることなく、心折れずにやり切ったことが誇りです」(奥さん)。今後3人とも相撲を続けるというが、指導者やプロ入りなど目指す道は異なる。「今日の負けを力に変えたい」(ムンクさん)、「足りないものを見つめ精進したい」(オチルさん)と決意を新たにした元日。別れの春を前に、奥さんは「ここからまた頑張って、いつか日本一を獲って再会し、笑い合いたい。それが夢です」と前を向いた。
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