小田原市城山の個人住宅建設地で7月中旬から行われていた発掘調査で、市内では初めてとなる前方後円墳が確認された。8月16日に報道関係者向けの現地説明会が実施され、市の学芸員が小田原周辺地域で想定される古墳時代の様子などを解説した。
発掘された遺構は鍵穴型の円と四角部分の境目辺り。土が盛られる墳丘部は削られていたが、その周りに掘られる周溝部の黒土の形状や、底に穴を開けて祭祀などで用いられた「底部穿孔土器(ていぶせんこうどき)」(埴輪の原型)が出土していることから、古墳時代前期(3世紀末)の前方後円墳であると確認された。県内では海老名市の秋葉山3号墳に次ぐ古さの前方後円墳となる。
これまで小田原市内では3世紀前半とみられる前方後方墳(四角型の墳墓)が確認されていた。前方後円墳は建造に際し、当時のヤマト王権による承認が必要だったと想定されている。
学芸員によると、今回の発見は小田原やその周辺には前方後円墳を造ることができる有力者がいたこと、古墳時代から中央の政治的組織と関係が築かれていたことを明確にするものだという。
集落のモニュメント
城山の前方後円墳は墳丘部が縦が約35mで丸部分の直径が約25m、その外側を幅約4mの周溝が囲んでいる。現地で説明した学芸員は「遺構は高台の丘陵地、尾根部分を削り出して建造されたもの。この地域を治めた有力者の墓として、北部(荻窪周辺など)の集落から見ることができるモニュメントのようなものとして存在していたのでは」と推察した。
市は今回見つかった前方後円墳の一部について、史跡などにはならない保存状態だとし、調査後に埋め戻した。墳墓の状況は来年秋に予定されている遺跡発表会で報告され、土器や写真が最新出土品展で展示される。
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