繊細で豊かな音色を生み出すピアノ。主な材料は木で湿度の影響を受けやすく、8千点以上の部品から成る複雑な構造を持つ。その”良い音”を守るのが専門的な知識と技術を持つ「調律師」だ。
小田原市曽比にある「杉山ピアノ調律所」の杉山雄二さん(75)は父と自身、息子と三代にわたって調律師になった。
雄二さんの父、啓次郎さんは大正生まれで、89歳まで現役で活動。「父の時代はほとんど調律師がおらず、県西地区では先駆者だったのでは」と雄二さん。その姿に憧れて父の後を追い、高校卒業後にピアノ製造工場へ就職。日中は製造業務、夜は先輩から調律の技術を目や耳で学ぶピアノ漬けの日々だった。1970年に「杉山ピアノ調律所」を設立。情操教育としてピアノが人気の年代で、当時は月に120台近く調律したことも。2005年から桜井小そばに店舗を構え、販売・買取、ピアノ教室など総合的にサービスを行う。
使用頻度や弾き手、環境などで1台1台異なるため、「すぐにピアノの状態を把握することが大切」という。誰が弾いても同じ音色を出せるようにすると共に、依頼主の望む状態にするため、感性も重要。「調律は杉山さんじゃないと駄目と言ってくれる方もいる」と信頼も厚く60年近くのキャリアがあるが、「やりがいを感じる一方で、難しさや怖さもある」という。「一生懸命ピアノに向かえば良い音になる。調律は心の仕事」
祖父と父の仕事を見てきた博紀さん(50)も調律師に。「父は部品を外さずに、手の感触だけでどこを直したら良いかすぐに分かる」と、父親の背中を大きく感じている。
家庭で使用するピアノは、1年に一回を目安に調律すると良いという。最近は扱いやすさなどで電子ピアノの需要が高まり、全国的に調律師も減っている中でも雄二さんは、「木でできたピアノは柔らかく、暖かい音が出る。『良い音』と喜んでもらえる仕事をこれからも続けていきたい」と微笑んだ。
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