将棋棋士坂田三吉の生涯を描いた戯曲『王将』の劇作家として知られる北條秀司(ひでじ)(1902〜96)の生誕満120年を記念した展覧会「劇作家 北條秀司の世界 小田原で開花した才能と情熱」が10月26日(木)から市内3会場で開催される。小田原文学館、東海大学、(一社)日本ゆたかなまちづくり研究会が企画。
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関西を地盤とする日本電力(株)で働いていた北條は28年、箱根登山鉄道(株)の新設に伴い、出向社員として小田原に居を移した。仕事の傍らで劇作家を志し、37年に『表彰式前夜』でデビュー。没するまでに220点余の戯曲を世に送った。小田原に所縁のある劇団「こゆるぎ座」に無償で脚本を提供するなど、地域の文化発展にも寄与していた。代表作の『王将』は小田原で執筆され、47年に新国劇で初演。その後も舞台や映画で上演され、緒形拳や勝新太郎など数々の名優が演じた。
展覧会では、俳優や劇作家らとの交友関係が分かる書簡や写真のほか、日記や原稿、ポスターなどを展示する。資料を整理した東海大学の馬場弘臣教授(65)は「小田原にこんな人がいたことを知ってほしい」と話す。会場と会期は【小田原文学館】10月26日〜12月3日(日)【おだわら市民交流センターUMECO】11月1日(水)〜15日(水)【旧松本剛吉別邸】11月7日(火)〜19日(日)。11月12日(日)午後2時半には、報徳会館で緒形拳さんの長男で俳優の幹太さんを招いたトークイベント、神田蘭による『王将』の講談などを行う(入場料2千円、先着150人)。申し込みや詳細は合同会社オフィス野の花【電話】090・8835・0790【メール】h.baba@office-nonohana.com。
20年の研究成果を形に東海大の馬場教授が企画
展覧会の企画は、日本近世史を専門とする東海大学教育開発研究センターの馬場教授が中心的な役割を担った。
2002年に小田原で北條秀司生誕100周年を記念した展覧会が開催されるにあたり、資料の整理を依頼されたことがきっかけで、以来20年以上にわたり整理作業を進めてきた馬場教授。段ボールに詰め込まれた膨大な数の書簡や書画、原稿などをひとつずつ確認し、年代やテーマごとに分類してきた。25個の棚が埋まるほどの資料を保管し、学生らの協力を得ながら、整理作業を今も進めている。
「急がなきゃ」と、退職のタイムリミットが迫る中で、研究の成果を形にしようと今回の展覧会を企画。交流のあった人との書簡などから北條秀司の人物像を描き出し、構想表や原稿などから名作が生まれた創作過程に迫る。「会場ごとにテーマを変えて展示している。3カ所を巡って楽しんでほしい」と話す。11月12日の記念イベントでは記念講演に登壇。一部展示会場では展示品目などをまとめた図録を販売(予価1千円)する。
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