神奈川県や横浜市、横須賀市、大和市から委託を受けて性的マイノリティー当事者や家族からの相談、支援事業などを行う認定NPO法人「SHIP」=本部・横浜市神奈川区=。子どもからの相談も多く、理事長の星野慎二さん(63)は「親や周囲が子どもの性別を決めつけないでほしい」と訴えている。
相談 年間350人
SHIPは2002年設立の性的マイノリティー支援団体「横浜Cruiseネットワーク」が前身。電話や対面で相談を受けるほか、当事者や家族の交流の場を提供する。22年は対面と電話を合わせて約350人の相談を受けた。
長年、相談を受けている星野さんによると、最近は当事者よりも保護者からの相談が増加傾向にあるという。子どもからLGBTQなどであることをカミングアウトされ、接し方が分からず、相談に訪れるケースが多い。星野さんは「子どもの自己肯定感を高めるには、保護者の理解が必要」と訴える。ただ、保育園の保護者の中には「女性保育士がいい」という声が多くあることを挙げ、「保護者にジェンダーバイアス(男女の役割への固定観念)があるのでは」と指摘。その上で「保護者が子どもの性別を決め付けてしまうのは良くない」と強調する。また、中学や高校でも「進路指導で『女子ならこの職業に進むべき』という決め付けをする教師がいる」と懸念する。
身近にモデル不在
子どもからの相談で多いのは「身近にロールモデルとなる人がいない」という不安の声。最近は「LGBTQであることをある程度受け入れて、その上で孤立してしまっている人が多い」と分析し、身近な相談窓口や交流の場をもっと増やすべきだと主張する。
パートナーシップ宣誓制度が県内全市町村に整備されたが、自治体により受けられる行政サービスの範囲に差がある。星野さんは「公営病院での手術の同意など、利用できるサービスの範囲を広げて、分かりやすくしてほしい」と自治体の対応に期待する。さらに、同居する子どもも家族と認める「ファミリーシップ制度」の導入も検討してほしいと訴える。
最後に「LGBTQの人は言えないだけで、身近な存在だということを知ってほしい」と語り、カミングアウトをしなくても過ごしやすい社会であってほしいとした。
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