学童集団疎開をした子ども、戦地に赴いた兵士、日本に駐留していた外国人、それぞれが感じた戦争とは―。小田原市とその周辺地域の戦争体験を掘り起こし、後世に伝える活動をする「戦時下の小田原地方を記録する会」(飯田耀子代表)が終戦の日の8月15日、会誌『戦争と民衆』の第93号を発行する。
同会は1979年に戦時中を専門に研究していた大学院生の井上弘さん(69・現事務局長)と高校教諭、元中学校教諭の3人で設立した。当時は各地で空襲などの戦災を記録する団体が発足していたといい、「庶民の体験を活字にして残したい」と、翌年6月に創刊号を発行した。当初は手記を中心に掲載していたが、庶民の”生の声”を残そうと、インタビュー形式で聞き取りまとめるスタイルを中心に編集するようになった。
これまでの手記と聞き取りの記録は約190本にのぼる。戦争体験者の多くはインタビュー協力者からの紹介。戦時下にドイツ軍が箱根で過ごしており、「通訳を介してドイツ人にインタビューしたこともあった」と井上さんは話す。
会費と寄付で発行
戦争体験の記録はテープレコーダーにインタビューを録音し、ノートに書き起こしてまとめている。現在はICレコーダーを使用するが、ノートに記すスタイルは変わらない。井上さんは「なれるまでは約1時間のインタビューを10時間ほどかけて書き起こしたこともあった」という。
会誌には証言者の記憶を裏付けるために、「ミニ解説」を紹介しているのも特徴。資料や専門家に聞いて確認を取り証言内容に補足するなど、当時の様子をより鮮明にしている。
現在は元教諭と現役教諭の5人で活動。会誌は会費と、活動を応援する人からの寄付で発行している。年々戦争を知る世代が少なくなり、聞き取りが難しくなる中で、祖父母や両親などから伝え聞いた戦後生まれの人からの証言を集めながら年に2回発行。戦争の記憶を伝え続けている。
最新号93号には国民学校に通っていた人などの証言を紹介。小田原市郷土文化館や平井書店などで無料配布を行う。また戦後80年の節目を迎える来年に向け、6冊目となる証言集の発行の準備を進めている。
ウクライナへの軍事侵攻など、いまも世界で紛争が続く中、井上さんは「多くの方に読んでいただければ。地元で起きた戦争の記録を次世代に残し、平和の大切さを伝えたい」と話した。
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