7月に『箱根・仙石原の四季物語』を出版した 加藤 学さん 静岡県御殿場市在住 54歳
四季の物語を味わう
○…仙石原で出合える昆虫や動植物、美しい景色の数々を、自身で撮った写真と等身大の言葉でまとめた一冊。何も言わない自然に四季の物語を読み取り、その移ろいに思いを巡らす姿はどこか文学的。仙石原で過ごしたのは16年間。「厳しい自然ではあるけど、それでも美しい。ここを訪れたら、きっと何かが見つかるはず。この本をお供に、探訪してほしい」
○…地元岐阜県で2度職に就くも「いつまでも閉じこもっていたくなかった」。尾崎豊の『卒業』や『僕が僕であるために』をテープが擦り切れるまで聴いた24歳。「人生には新しい出発が必要なときがある。両親の期待を裏切って」、環境保全が学べる都内の専門学校に入学した。
○…クワガタやカブトムシを追いかけ林を駆けていた幼少期。専門学校では原生的な自然が残る長野県黒姫高原で野外実習ができた。「他の学生と比べてこれだけは負けなかった」というのが、インタープリテーション。専門用語に頼らず誰にも分かりやすく解説する技能に長けていた。「教科書通りではなく自分の言葉で伝えられたのは、子どもの頃からよく自然の中で遊んでいたからかな」。卒業後は富士箱根伊豆国立公園の豊かな自然を来訪者に分かりやすく伝える施設「環境省箱根ビジターセンター」で16年間働いた。
○…30代で両親を亡くし落ち込んだ時期もあったが、静かに力強く環境の変化を乗り越えてきた。仙石原から御殿場市に転居したのは2年前。再度の出発に踏み切り、現在はアルバイトとライターとして暮らす。1年前にはSNSとブログを開設。度々仙石原を訪れては、本に入り切らなかった魅力を発信している。繰り返す春夏秋冬のドラマを、温かいまなざしで見守っている。
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