平成26年度県救急医療功労者表彰を受賞した 大利 昌久さん 山北町山北 72歳
医療に国境なし
○…海外在留邦人への医療や、地域での休日・夜間診療など長年の活動が評価され、このほど県の功労者表彰を受けた。平日は診療所に泊まり込んで急患に備え、土日は横浜の自宅へ戻る。長崎大学医学部卒。実家は7代続く医師の家系。東大医科研で感染症と寄生虫学を修め、日本初の「熱帯医学専門医」の資格を取得した。
〇…36歳で外務省の医務官としてアフリカへ渡った。これが海外での医療行為の足がかりとなった。「医療水準の低さや移動距離の問題もあり、邦人14人の死に直面した。中には青年海外協力隊員もいた」。この時の苦い経験が海外邦人医療基金の設立や海外診療所の開設など、後の海外在留邦人支援につながった。根底に「海外で立派なことをしている人たちを助けたい」という思いがある。
〇…クモ毒にも専門知識がある。小5の時にアリに似た「アリマネグモ」の擬態にだまされて以来「クモの虜」に。連日自宅近くの山でクモを観察し、生物の本を読みふけった。情熱は消えず、東大医科研で行ったクモ毒の分析で医学博士を取得した。「子どもの頃から世界中を巡り、珍しいクモに出会いたいと思っていた」。海外を巡る医師となり、その夢をかなえた。
〇…「富士山や海、温泉が近く、山にはクモがたくさんいる所が魅力的」。28年前に山北町におおり医院を開院し、「全身を診る」総合診療に取り組んできた。海外からの医療相談にもメールや電話で応じ、要請があれば海外へ出かけることもある。
〇…写真が趣味。開院10周年の際には山北町中央公民館(現・生涯学習センター)で、海外で撮影した風景や人々の写真展も開催した。娘4人、孫3人に恵まれるが、目下の悩みは医院の後継者がいないこと。
「父のように、体が動く限り医師を続けることになりそう。海外支援を続けながら、今後は地域の在宅医療にも尽くしていきたい」
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