数百年の時間も再現 町立美術館で 田中開さんの能面展
「これを機に能の世界に触れてほしい」。熱海市泉に住む田中開さん(80)が、現在湯河原町立美術館で能面展を開いている。三鷹市の公務員だった田中さんは50歳で退職し泉に移住。それまでは仏像などを趣味で彫っていたが、ある日東京で能面作家・橋岡一路氏の作品に出会い、後に弟子入り。これまで30年以上能面を打ち続けてきた。時には博物館に通い名作を目に焼付けてお手本にしたという。こすれた跡やわずかな色の剥げ具合なども忠実に再現し、作品は数百年前の文化財そのもの。もちろん製作に自身の意匠を入れる余地はない。「能面作りは無心でなければいけない。役者の心や汗、脂がしみ込んで何ともいえない表情が出るんです」。作品は能舞台で使われる事もあり、役者の体の一部になった瞬間、喜怒哀楽の入り組んだ表情を放つ。会場では匠の技を至近距離で見学できる。面が登場する作品の解説も興味深い。今月24日まで。【電話】0465(63)7788