コーチは元アジア大会代表
温泉街で口コミ人気の陸上クラブ
箱根の旧道沿いにある湯本小学校校庭が週2回、陸上の練習で賑わっている。授業を終えた小学生たちの全力疾走を見つめるのは、コーチの土岐真保美さん(47・湯本在住)。土岐さんは九州出身で、10歳から陸上を始め、中学時代に全国大会出場などの成績を残し、社会人になって九州NECに所属。90年の陸上アジア大会に出場し当時の3000mの日本記録を塗り替えた。頂点に立った土岐さんだったが、今度は追われる側のプレッシャーを背負うようになった。実業団では2位・3位ではなく、常に優勝という結果が求められる世界だったという。30歳で引退し、その後箱根湯本に転居。現役時代のように走る余裕はなくなったが、陸上の世界から心が離れることはなかった。
きっかけは5年ほど前。娘の優花ちゃんと友達の2人が陸上に興味を持ち、土岐さんがコーチになって走りかたを教え始めた。湯本小校庭での特訓が周囲にどう映ったのか「仲間に入れて」と子どもたちが続々加わり、個別指導はいつしかメンバー30人に増加。「箱根湯本クラブ」と呼ばれるようになった。
土岐さんの持論は「小さい頃から練習した方が速くなれる」。地面に円盤やラダー(梯子のようなもの)を並べて瞬発力や敏捷性などを高めるトレーニングを繰り返し、最後はリレーで締めくくる。球技に比べて陸上の練習は短調になりがちだが、タイムが向上するから子どもたちは楽しくて仕方ない様子。最近では陸上の競技会に出始める子もいる。箱根駅伝の町で育った駅伝選手の輩出も夢ではなさそうだ。ちなみに子どもたちが入る箱根中学校には陸上部がない。土岐さんはそれを踏まえた上で「どんな部活にも活かせるよう体力づくり重視です。陸上を続けてくれたら嬉しいけれど」と目を細めていた。
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