箱根ホテル小涌園(224室)が10日に約60年の歴史を閉じ、スタッフが最後のチェックアウト客を見送った。ロビーには開業当時の写真などが貼り出され、ホテルのルームキーとセットだった「キータッグ」を外して宿泊客に贈った。前夜は以前から宿泊予約が入り、約400人が最後の一晩を過ごしたという。
高校生の頃から訪れ、家族で何度も泊まったという遊佐清美さん(71)は「ここは我が家の、私の歴史です。昨晩は館内を巡りました」と惜しんだ。浜松隆也さん(47)は館内に20年前まであった床屋でカットを担当。親子2代続いた店で「政財・芸能界の有名人が来てくれた」と振り返った。
「育てられた」
藤田観光は全国各地でホテルを運営しているが、転勤せずに長く箱根で働き続けた人も数多い。20年にわたり予約やフロントなどを担当した横山直樹さん(46)は、見送りに立ちながら「まだ最後という実感がわきません。仕事人生のほとんどを過ごし、このホテルに育てられました」。宴会場で働く小暮喜美代さん(69)は「外国人のお客さんと話せなくて、それでも笑顔で気持ちが通じた時は嬉しかった」と涙をぬぐっていた。
建物や敷地の今後の活用は未定。隣接する和風庭園の蓬莱園には「離れ」をイメージした高級宿泊施設を建設する構想もあり、本年度中に着工、五輪前の完成を目指す。ホテル隣にあるファミリーマートは1月30日で閉店となる。
今後は昨年オープンしたばかりの箱根小涌園天悠(150室)がエリアの旗艦施設となり、ユネッサンは引き続き営業を続ける。
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