秦野市千村出身の漫画家・谷口菜津子さん(27)が10月9日に、3作目となる漫画『人生山あり谷口』(リイド社・税込み1080円)を出版した。リイド社のwebサイト「トーチ」で連載されていた登山初心者の筆者による「笑いあり涙ありのズボラ登山」セルフドキュメンタリー作品。友人・同級生と登った高尾山、大山など5カ所の珍道中を収録。その中には谷口さんが子どもの頃に1人で遊んでいた、思い入れのある頭高山も登場する。
登山漫画を書くに当たり「何か降りてくるんじゃないか」と思い、真夏に1人で登った頭高山。酷暑と顔の周りに飛び交う虫、草むらから出現するヘビなど、笑いを誘う秦野色豊かなエピソードが満載。チューリップで有名な泉蔵寺や白山神社、若竹の泉などの名所紹介もされている。
漫画家として立身して4年。好奇心や向上心溢れる若きアーティストは様々な理由から「この田舎を愛せない」という衝撃的な記述を残すが、文字とは裏腹に、家族や秦野の友人とのエピソード、幼少の思い出や「千村ガイド」等その内容は故郷への愛情に満ちている。
作品中のセリフやト書きも全て肉筆にこだわる谷口さん。5つの山を登る間に、プライベートでは恋人が病気になったり、祖父が亡くなったりと辛い経験もあった。その時の心の動揺や辛さを赤裸々に書きつつも、大学生の時に生み出した自身のキャラクターやコミカルな表情描写、温かみを感じる肉筆が、悲しみですら柔らかく優しく読者に伝える。谷口さんは「人に見せる以上、影響を与える。見てもらうためには、辛い経験も一度自分の中で悟った上で結論を出す」と語る。登山漫画でありながらも、20代女性の等身大の姿が描かれた作品だ。
自信の拠り所は「私にしか描けない」
原点は幼少期の姉との思い出。姉が自由帳に描いた絵本のようなものを真似し、自分でも描いた。姉のために書いた新聞には漫画も入れ、それを見た姉に「面白いからもっと描いてよ」と言われたことが嬉しかった。
美大時代にブログで日記漫画を始めると、ここでも読者の反応が嬉しく、卒業を控え、周囲が就職活動をする中、出版社へ自分を売り込む日々を送る。そこでは「向いていない」など辛辣な言葉を浴びせられたが、卒業後まもなく、作品が竹書房の目に留まった。
竹書房でレバ刺し漫画を描き始めると、業界のライターがその素質を見い出し現在はweb、雑誌で漫画やイラストを描く。「私のドキュメンタリーや植物の絵は私にしか描けない。他の仕事もしたが上手くいかず。けど、漫画なら人のためにも、自分のためにもなってるって自信を持って言える。生きていく手段はこれしかない」と語気を強めた。
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