秦野市柳川で活動する任意団体フィールド・フォー・シチズン(小池勉代表・53)が、全国有数の生産を誇る秦野の八重桜を守ろうと、低樹高化が可能なジョイント栽培の取り組みを全国に先駆けて開始した。1月26日には植樹祭が行われ、35本が植えられた。
全国有数の食用桜花の生産地である秦野市。特に千村地区は「八重桜の里」と呼ばれ、江戸時代末期から生産を行っている。しかし近年では後継者不足をはじめ、高木となる八重桜の摘み取り時に、生産者の高齢化に伴う落下の危険性も高まっており、存続を危ぶむ声も出てきている。
昨年4月、こうした現状を耳にし、同団体で解決策を模索。小池さんが神奈川県農業技術センターに勤めていることから、アドバイスを受け、低樹高化に向けジョイント栽培に取り組むことになった。八重桜のジョイント栽培は同センター内では試験的に行われていたが、一般栽培は全国初の取り組みだという。
このジョイント栽培は主枝を地面と水平に曲げて接ぎ木することで、花や実がつく枝を低い位置に留めることが可能となる。すでにナシやウメなどで実用化されており、八重桜もこの方法を活用することで脚立などを使わなくても手の届く範囲で収穫できるようになるため、農家が抱える課題をクリアすることが見込めるという。
遊休農地を活用
同団体は2016年に遊休農地の解消をめざして結成。小池さんが活動場所を検討していたところ、上地区で農業の活性化に取り組む和田ローズガーデン園主の和田稔さん(67)と知り合い、柳川で活動を始めた。
上地区では住民の高齢化による遊休農地化が進んでおり、同団体ではそうした土地を借り受け、田んぼから開始。昨年は畑も始め、サツマイモの収穫も行ったほか、農道の整備、地元行事への参加など、遊休農地の解消だけでなく地域貢献活動も行ってきた。今回の八重桜ジョイント栽培も遊休農地を活用。鹿などに芽を食べられないよう電気柵なども設けた。
「農家の一助に」
1月26日に行われた植樹祭では、雪がちらつくなか、同団体のメンバーや一般参加者が支柱を基準に穴を掘り、2mほどの苗木を植えていった。今後は、3月下旬に同センターのサポートのもと、メンバーが接ぎ木や下草刈り、剪定をして、ジョイント栽培の経過を確認していくという。
「3年目くらいから花がつき、実際に収穫ができるようになるのは4年くらい。時間がかかる活動ですが、これによって収穫もしやすくなる。栽培方法が広まれば、農家の助けになるのでは」と小池さん。地元農家として一緒に活動してきた和田さんも「若い力が入ることで昔のような豊かな景観に戻ってきた。住民も歓迎している」と話す。小池さんは「地元の協力があるからできること」と言い、「八重桜も段階的に本数を増やしていきたい」と抱負を語った。
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