「猫がくる ほめてほめてと いう顔で 何か不穏な ものをくわえて」「猫だから モテるんだからな ひげ面で 甘えん坊の 中年なんて」-秦野市菖蒲在住の猫歌人・仁尾(にお)智(さとる)さん(51・ペンネーム)が『猫のいる家に帰りたい』(辰巳出版)を6月24日に出版した。この本には仁尾さんが猫専門誌『ネコまる』と『猫びより』で連載していた短歌とエッセイが収録されている。
仁尾さんは元々は五行歌人だった。携帯電話のマニュアル作成会社に勤めている時に五行歌の公募に投稿するも落選。「落選するなんて!と思って、本格的に始めました」。2004年には『ストライプ』という五行歌集も共著で出版。その後歌人・枡野浩一さんが投稿された短歌の中からおもしろいと思ったものを取り上げるブログに、他流試合のつもりで初投稿。見事選出され、短歌の投稿の常連になった。また枡野さんがインターネットを中心に募集した「ドラえもん短歌(2005年・小学館)」では「自転車で 君を家まで 送ってた どこでもドアが なくてよかった」等が傑作選に選ばれている。
「猫」をテーマに
そのうち短歌のテーマが家にいるたくさんの猫たちになっていく。妻が実家で猫を飼い好きだったこともあり、捨てられていたり、親とはぐれてしまっている猫を見ると放っておけなかった。里子に出したり、看取ったりして現在は家に5匹の猫がいる。「猫のことが一番体重がのった、人に届くものが書ける。色々な雑誌に企画書を持ち込んで2007年から半年に1回発行の『ネコまる』での連載がスタートしたんです」。2016年には姉妹雑誌で隔月発行の『猫びより』でも連載が始まった。
そしてこの2誌での13年間の連載が単行本化。「まさか本になるとは考えておらず、棚からぼた餅でした」と笑顔を見せる。付録には仁尾さんのアイデアで猫用おやつ「CIAOちゅ〜る」専用のポチ袋をつけた。「猫のいる家への定番の手土産。むき出しよりも気の利いたポチ袋があればいいのにと思っていたんです」と仁尾さん。
「短歌の肝は”人”」
今回仁尾さんのお気に入りは「帰るたび 『どなたですか?』と 嗅ぎにくる 猫と十年 暮らしています」だ。当時仁尾さんは単身赴任をしていたこともあり、元々妻が飼っていた猫に帰ってきてもずっと「いないもの」として扱われていたことが印象に残った。このように実話をもとにした短歌へのこだわりは「句を詠んだ人が見えることが大事だと思っている。猫がかわいいのは当たり前で、人が興味を持つのは”人”なんじゃないかな」と話す。
「短歌は持ち運びができる」と魅力を語る。57577のリズムは覚えやすく、作っていた時の感情も合わせて思い出せるとか。猫がいる中で集中力を保つのは難しいというが、猫との暮らしは”ちょうどいい”。「猫はちょうどよく分かっていて分かっていないから、良いように解釈できる。自分がだらだらしていても、落ち込んでいても、見ていると気が楽になる。星空を見るみたいな気持ちかな」と笑う。
「遠くの人に届けたい」
目標は遠くの誰かに届かせること。「本を読んで猫がいいなと飼い始めたり、短歌が面白いなと短歌を始めたり、物理的にも精神的にも遠い人に本がきっかけで必要のないことだったけど行動してもらえると嬉しい」。
『猫のいる家に帰りたい』はA5版オールカラー112頁、1300円(税別)。初版限定「ちゅ〜る袋」付。書店やインターネットで購入できる。
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