連休明けは環境の変化による「五月病」が起きやすいといわれる時期。また、昨年から続くコロナ禍による生活環境の劇的変化で、つらさを感じる人も多いのではないだろうか。そこで、東海大学医学部総合診療学系精神科学教授の山本賢司医学博士(56)に今起きやすい心の不調について聞いた。
――新年度やコロナ禍、テレワークなど、生活環境の変化で心と身体の不調を感じることが多い時期です。具体的にはどのような変化(症状)が現れるのでしょうか。
「ストレスに関係する症状としては、【1】体の症状(どうき、めまい、嘔吐、不眠など)、【2】心の症状(不安、イライラ、抑うつ、摂食障害、自傷など)、【3】行動として出る場合がある(過食・喫煙・飲酒量の増加、ギャンブルなど)があります」
――どのような人がなりやすいのでしょうか?
「まずお伝えしたいのは”誰にでも起こりうる”ということです。それがいつなのか、たとえばライフイベント(進学、就職、結婚、出産など)の時なのかなど人それぞれです。”自分は大丈夫”ではなく、自分もいつでもなりうると思っていたほうがよいですね」
――ストレス状況に置かれた時の対処方法について教えてください。
「”生活(日常)を取り戻す”ことがキーワードです。楽しみを持ったり、人とつながりを持つとか、達成感を持つとかを考えていくことが大切です。今、日常とかけ離れた生活になりがちだったり、新年度になってこれまでと違う生活となったりしている場合、それを”自分なりの生活”として取り戻していくということを考え直していかないといけない。その中で、ストレスに対処するには、ある程度”不安を整理する”ということが大切です。不安には、”解決できるものと解決できないもの”があります。”解決できない、自分でコントロールできないもの”を認識することが必要です。そして自分がコントロールできることに注目してみてください。自分がコントロールできるものを、自分の強みとして考えていくことは不安に対処していくのに有効です」
――”生活を取り戻す”とは具体的にどういう意味でしょうか。
「個人にとってあまりに劣悪な状況や環境であれば別ですが、”変化した環境の中で生きていくんだ”ということを受け入れるという意味です。生活を取り戻すというのはいまの新しい環境になれて、自分のペースをつかみ、新しい生活を構築することなのです」
――”不安を整理する”にはどうしたらよいでしょうか?
「たとえばドキドキが止まらないとすると、なぜドキドキするんだろう?と考えるだけで落ち着くこともあります。その”ドキドキする”という不安感に対する対処法をいくつか持っておいて試すのもいいですし、新たに対処法を取り入れていくのもいいと思います。手立てがない場合は、現状でできるものを探しましょう。自分ができる運動、たとえばストレッチとか、部屋の掃除とか、ストレスを感じたときにやることを決めておくといいと思います」
――ストレスとうまく付き合うコツはありますか?
「ストレスはわるいものだけじゃない、ストレスがなさすぎても生産性は落ちるといわれています。適度なストレスは必要で、決して悪いものだけではないということを認識してください。自分に有害なストレスだけを解決する方法を考えるのがコツです」
――家族や友人など周囲の人が、不調を訴えた場合の対処法を教えてください。
「まず聞いてあげる(傾聴)ことです。その場で否定しない、自分の価値観を持ち込まないで聞いてあげることが大切ですね。ついつい自分の対処法とか自分の意見を言ってしまいがちですが、ストレスの解消法は人それぞれ。まずは「つらさ」を聞いてあげることです。そして、これは度を過ぎているんじゃないかという場合(例えば眠れない日が続いている、会社を休んでいるなど)や、日常生活に支障をきたしている場合には、専門家に相談することをお勧めします。そこまでじゃない場合には相手が不安を整理できるように”聞いてあげる”ことです。人間は話すことで満足感や達成感を味わえることも多いので、とくに身近な人がそういう状況に陥ったら、まず聞いてあげること。とくに家族だと、よく知っている相手だけに、ついつい自分の意見を言ってしまいがちですが、”つらいんだね”と共感してあげることが大切です」
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
「誰もが不安をもっているもの。その不安は決してあなただけではない、みんなが持っているのです。不安というものはストレスと同じで決して悪いものだけでないんです。不安を解消する自分なりの対処法をいろいろと試してほしいと思います。そして、不安感が日常生活に大きく支障をきたしてしまう場合には公的な窓口や専門家に相談をしてください」
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